2014年12月28日日曜日

アメリカ大学院留学(UC Berkeley / Ph.D. in Integrative Biology)

今年最後のメルマガとなります。今回は、University of California Berkeley, Department of Integrative Biology に現在所属されている鈴木太一さんに留学についてご紹介していただきます。皆様お楽しみください。

・出身大学、学部学科、大学院留学先、学部学科を教えてください。

日本大学生物資源科学部でBachelorを取得し、University of Arizona,Department of Ecology and Evolutionary Biology でMasterを経て、 編入(Transfer)によりUniversity of California Berkeley,Department of Integrative Biology のPhDプログラムに現在所属しています。

・キャリアプランについてはいつごろから考えていましたか?

アカデミアの職業につきたいと考え始めたのは高校3年生、海外大学院留学を考え始めたのは学部2年生。

・留学先をそちらに選んだ動機を教えてください。

実はUniversity of ArizonaでPhDプログラムを終えるはずでしたが、プログラムの2年目で所属していた研究室の教授がUC Berkeleyに移ることになり、バークレーのPhDプログラムに編入(Transfer)することになりました。教授が引き抜かれ、研究室ごと他大学に移動することはよくあるのですが、その詳細はあまり知られていないので、Transferについてあくまでも自分のケースをもとに紹介します。編入先の大学からPhDを取得したい場合、編入先のPhDプログラムのQualifying Exam(進級試験)を受ける必要があります。履修単位のTransferは大学によって異なりますが、必修科目の単位のみ受理されました(選択科目は移すことはできず)。引越し費用などは教授と編入先の大学との交渉次第ですが、自分の場合すべて編入先の大学が経費をカバーしてくれました。アリゾナではPhD 3年生のはずですが、バークレーでは新入生として扱われ、PhD 2年生のスケジュールをこなしています(これも事情によって異なるはずです)。

・大学院プログラムの紹介/特徴を教えてください。

UC BerkeleyのIntegrative BiologyはEcology and Evolutionary Biologyの分野では全米1位にランキングされている名門です(自分は棚からぼた餅ですが)。大きな特徴の一つに、この学科は5つの博物館(脊椎動物学、考古学、昆虫学、植物学、植物園)を統合(integrate)するためにつくられた学科であるため、幅広い施設や頭脳が揃っています。例えば自分は哺乳類や鳥類の標本で埋め尽くされた脊椎動物学博物館のフロアの中にオフィスがあり、一つのオフィス内も同じ研究室のメンバーではなく、他の研究室のメンバーとごちゃまぜに配置されているため、研究のアイディアも自然にintegrativeになるという仕組みです。数々のノーベル賞受賞者が所属するLawrence national labとも関係が深いです。セミナーは週に一度学科が他の研究者を招いて主催するもの、スペシャルセミナーというものがたまに主催されます。それぞれの博物館も週に一度セミナーを主催し、学科に関係するセミナーが毎日のように大学のどこかで行われています。学科の学生も月に一度チョークトークという黒板を使ったカジュアルな発表会を行っています。バークレーの街はヒッピーで有名でもあり思想がとても自由です。そのせいかうちの学科のPhD卒業条件はとても簡単で、2学期以上のTA と2つの必修科目(進化学とTAのための授業)があるだけ。進級試験も口頭試験のみ。卒論も自分が発行(publish)した論文をホッチキスでとめて卒業することが認められています。卒論発表(Defense)もする必要がないというのだから驚きです。他の大学院と同様、学費と生活費が支給されるTA (Teaching Assistant)は5年間保障されています。

・留学生活の苦労、留学の準備としてするべきことを教えてください。

日本の学部生が海外の大学院に進学するには大きく二つの道があると思います。

  1. 学部を卒業し、すぐに海外の大学院に入学し、知識やスキルを現地でつけるという道。
  2. 学部を卒業し、日本の大学院(修士または博士)に進学し、知識やスキルをつけてから海外の大学院に渡るという道。

自分はなんの知識もないまま海外大学院に進学する1.の道を選びましたが、最初の一年は想像を絶するつらさでした。よくわからない土地でよくわからない分野をよくわからない言語(英語)で勉強すること、知識もスキルもある年上のライバルと常に比べられることなど、英語がある程度できなければ現地で知識やスキルを身につけることはリスキーです。しかし、科学を英語で理解することはとても重要です。最初の一年さえ生き残れば、若い年齢で自分を極限まで追い込むことができる環境は大きな魅力です。アリゾナの大学院で4年間(Master 2年+PhD 2年)を経て、新入生として入学したバークレーは気持ちの面でとても余裕がありました。日本の大学院と海外の大学院はとても違うので、これが2.の道にあてはまるのかわかりませんが、研究に必要な知識やスキルを身につけた後で留学することは少なからず現地でのストレス軽減になるはずです。実際にPhDプログラムで出会ったアジア系の国の留学生はそれぞれの国でMasterを持っているのが普通です。留学後に科学を英語でコミュニケーション/プロセスするトレーニングは必要ですが、日本にいるときから意識していればそれほど大きな問題ではないかもしれません。留学の準備として、1.の道を選ぶなら特に英語のコミュニケーション能力をつけること、2.の道を選ぶなら世界レベルで活躍する日本の研究室を選び、できるだけ英語で科学を勉強すること、は大事ではないでしょうか。

・これから大学院留学をする方へのメッセージをお願いします。

  • 「目の前に二つの道があるなら難しいほうを選べ」
  • 「金を稼ごうなんて思うな。30、40歳まで自分に投資しろ」
  • 「簡単に実現できると思う道に成功はない」。
大学院留学を決意するきっかけになった父親の言葉です。いつもクラスで一番をとってきた人でも、よっぽどの天才でない限り、留学後はしばらく劣等生です。でも簡単に一番をとれる環境より、なかなか一番をとれない環境の方が人間は成長すると自分は信じています。精神論になりますが、大学院留学をしてどんな人間になりたいのかビジョンをもっていれば、どんな時も楽しむことができ、留学は人生のプラスになるはずです。

image courtesy of Stuart Miles
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発行責任者: 石井 洋平
編集責任者: 石井 洋平
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