2016年5月2日月曜日

「留学生リレー日記」第10回 Q&Aその2

留学生リレー日記も10回目を迎えました。今回は、前3回のみなさんの留学生活の記事で編集部が気になったことに対するQ&Aをお送りします。



Q1. 趙さんの記事で「アイスホッケーをすればいい論文が書けるとの誘い文句でアイスホッケーを始めた」とありますが、論文の執筆に対するプレッシャーはありますか?

論文3本が修了要件なので、プレッシャーはかなり大きいですね。第1著者で最低2本、あと1本は第2著者でも大丈夫です。それ以上の本数となると、先生の指導方針も大きいと思います。先生がテニュアを取るまではとりあえず論文の本数を重視し、取ってからはいい論文をいいインパクト・ファクター(IF)の雑誌に投稿するという傾向があると思います。
修士なので、論文を書く必要はなく、プレシャーはほとんどないです。ただ、自発的に指導教官に対してアピールし、指導教官にテーマを探してもらっており、今年の夏休みの間にプロジェクトをさせてもらう予定です。
プレッシャーはかなり感じますが、趙さんのおっしゃる通り指導教官がまだテニュアではないというのが大きいですね。テニュアになるための業績評価期間である2年以内に実績を出す必要があり、メンバーとして先生をサポートするためにも書かないといけないです。雑誌に関しては、IFが低いものに多く投稿するのもOKですが、基本的にドイツの研究所だと本数はあまり関係なく、IFの高い雑誌に掲載される方が重要とされています。

留学先の先生を選ぶ基準として、先生がテニュアをもっているのかいないのか、どんな雑誌に論文を発表しているのか、という点は必ずチェックしておきたいですね。また、論文を書くプレッシャーというのは、先生がグラントを取るために公表できるデータ・実績が欲しいという側面が大きいと思われます。





Q2. 滋井さんの記事で「人間関係のストレスは留学に来て減った」とありますが、人間関係のストレスはみなさん減るものなのでしょうか?それとも逆に異文化の中で他のストレスが増えるというようなことはないのでしょうか?
私はもともと会社で働いていたので、その頃の社会人生活と比較すると、今は上司からの勤務評定や飲み会もなく、ストレスはかなり減りました。だた、英語の問題や異文化の問題で、悩みを友達にうまく伝えられない、打ち明けられないというストレスはありますね。会話をするときには実際の発言だけではなく、ニュアンス等の部分で気分がうまく伝わらないとフラストレーションがたまるかもしれません。

減ったと思います。日本では建前が大事で、例えば夜遅くまで上の人が残っていたり、みんなが頑張っていたりすると、自分一人帰れない雰囲気があったりしました。また、修論前には頑張って執筆している姿勢を出すことが大事で、長く研究室にいましたが、こちらでは各自が自分の生活を大事にしていて、自由に来て帰ったりしているので、人間関係全般でのストレスが減ったと思います。ただ、やはり渡米した直後は英語でのコミュニケーションに問題があり、プライベートと仕事どちらでも、伝えたい事がうまく伝わらないことが多かったです。

私も人間関係のストレスが少なくなりましたね。ただ逆にとても小さい町なので少々退屈という面はありますね。修士で渡独した際には、大学院の環境に溶け込むのにとても苦労しました。授業についていくのは大丈夫でしたが、友達を作ったり、ドイツでの生活になじんだりするのにとても時間がかかりました。むしろやることがないので、新しいことを始めないと逆に何もないということがストレスに感じますね。だから新しいことに挑戦するハードル非常に下がったと思います。私の場合は、大学の卓球部に参加し、練習をしています。
 
人間関係のストレスはみなさん全体的に減るようですね。ただ語学のコミュニケーション上でのストレスを感じることが多いようですね。順調な留学生生活を送りためにも、何か新しいスポーツや趣味を始めるのがいいのではないでしょうか。





Q3. 川口さんの記事で「仕事で疲れていると週末にひきこもることも結構ある」とありますが、もしインターネットが無かったらどんな留学生活になっているか想像できますか? 
本当に想像がつかないですね(笑 ドイツには、昔から多くの日本人学生が主に音楽を学びに来ていましたが、どうしていたんでしょう。インターネットでは、基本的にSNSを使うことが多いです。最近、電子書籍で日本の漫画を読んだりもしますが、ドイツでは著作権の関係で残念ながら見れない日本のミュージックビデオも多いです。
インターネットが無かったらそもそも論文の検索ができないので、研究が進められません(笑 あと、私はよく実家の両親に電話しているので、それが重要な心の支えになっています。メールがなかったら教授の細かい指示を受けることができなくて不便ですね。毎回面と向かって会うのは大変ですし。
インターネットがないと日常の楽しみがなくなって加速的に枯れていってしまうかもしれませんね(笑 逆に引きこもり体質は物理的にいやでも改善されそうですが。

ひと昔前と比べ、インターネットのおかげで、気軽に日本の親類や友人とも連絡が取れ、留学のハードルも下がったと言えそうです。せっかくの留学生活ですので、現地でしかできないクラブ活動などとうまくバランスをとって、充実した生活を送りたいですね。


Q4. 海外で生活をする上で気になる治安の問題ですが、留学を始めてから何か危険を感じたり、トラブルに遭遇したりしたことはありますか?

 
特に危険な目にあったことはないですが、アメリカは銃社会なので、いつも気を付けるようにしています。最近近くで銃に関わる事件があり、犯人が逃亡するという事件がありました。でも周りのみんなはとても落ち着いているので驚きました。
 
特にありません。カレッジステーションは大学街なので全体として治安がいいです。ただ、テキサスはまもなく大学内に銃の携行が可能になるので、少し注意はしています。
 
全くありませんね。最近ドイツは難民問題を抱えていて、私も新聞やニュースでよく目にしますが、チュービンゲンはとても小さな街なので治安の悪化は全く感じられないですね。ただ、近くの高校の体育館が難民キャンプになっていて、体育の授業ができない、というのは聞きました。

あまり危険な目にあった方はいないようですが、注意をするに越したことはないですね。



留学生リレー日記はまだまだ続きます。次回からのテーマは留学生活で出逢ったトラブルです。
第11回へ続く


留学生リレー日記
第1回 プロローグ(1) アメリカとドイツからこんにちは
第2回 プロローグ(2) じゃがいも&ドライブ&シェアハウス
第3回 大学紹介編(1) いざボストンへ
第4回 大学紹介編(2) 棚から...
第5回 大学紹介編(3) 星を眺めて、哲学にふける
第6回 大学紹介編(4) Q&Aその1
第7回 日常生活編(1) アイスホッケーはじめました
第8回 日常生活編(2) 心理的ハードルが低くなる
第9回 日常生活編(3) チョコとポテトは必需品
第10回 日常生活編(4) Q&Aその2
第11回 トラブル編(1) アメリカの洗礼
第12回 トラブル編(2) ビザが届かない!
第13回 トラブル編(3) 自分が持てる分だけ、買おう
第14回 エピローグ 私にとって留学とは、将来への展望


執筆者プロフィール

  趙 雪薇 (ちょう ゆきばら)
タフツ大学 生物医療工学科の大学院1年生 修士卒業後に渡米
研究内容は細胞外小胞を用いた細胞のリプログラミングへの応用
  滋井 康人(しげい やすと)
テキサスA&M大学 海洋学科大学院1回生 大学院卒業後就職し、社会人留学
構造地質や堆積学等、地質学の習得を目的として留学
川口 雄久(かわぐち かつひさ)
チュービンゲン大学 International Max-Plank Research School of Neural & Behavioral Sciences 博士課程1年目 学部卒業後に渡独、修士修了
研究内容は、セロトニンの視覚情報処理における役割

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発行責任者: 武田 祐史
編集責任者: 日置 壮一郎
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