2020年4月25日土曜日

連載 インタビュー企画第1回:「ニューヨーク大学大学院生に出願から現在の研究の様子まで話していただきました!」

連載:インタビュー企画!「ニューヨーク大学大学院生に出願から現在の研究の様子まで話していただきました!」


今回カガクシャ・ネットは初の試みとして、現在大学院留学中の方にインタビューを行い、ポッドキャストとして配信することとしました。
今回、ニューヨーク大学のSackler Institute of Graduate Biomedical Sciencesという博士課程プログラムに所属している山口直哉さんがインタビューを引き受けてくださいました。
インタビュアーはカガクシャ・ネット、メルマガブログ編集員で2020年1月当時山口さんと同じ博士課程に所属しており、かつ、ルームメイトだった、現クイーンズランド大学所属の程野祥太です。

ポッドキャストは現在、AnchorSpotifyGoogle Podcast等で好評配信中です!随時他のプラットフォームへと拡大していく予定です。
ポッドキャストのRSSはコチラです。

以下は2020年1月に収録された本ポッドキャストを抜粋しスクリプトにしたものです。全編は是非ポッドキャストをお聴きください。





程野
この度、カガクシャ・ネットがポッドキャストにやってきた! 本日進行を務めるカガクシャ・ネット、メルマガ、ブログ編集員の程野祥太です。
カガクシャ・ネットは国内外の大学院教育について生の情報を発信しております。現役の海外大学院生や既に卒業された方で細々と運営しております。
普段はブログやメルマガで大学院留学に必要なステップや留学を成功させるヒントを体験談と共に伝えていますが、今回は実際に留学されている方にインタビューしてみたいと思います。実際に留学された方に経緯を語ってもらうのが留学を迷っている方に一番響くのではないでしょうか。
ご紹介しましょう。記念すべきカガクシャ・ネットポッドキャスト第一回、今回インタビューを受けてくださるのはニューヨーク大学大学院の山口直哉さんです!
山口さん、本日は大変お忙しい中ありがとうございます。

山口直哉さん(以下敬称略)
よろしくお願いします。

程野
それでは早速ですが簡単に所属している研究室とご自身の研究内容を教えていただけますか。

山口
New York UniversityのSackler Instituteという医学部のもつ博士課程に所属しています。5年生になりました。 専門はDevelopmental Genetics、発生遺伝学を専攻しています。研究内容はゼブラフィッシュという脊椎動物の小型魚類を使って、細胞が身体の中を動く仕組みの理解を目指しています。

程野
ありがとうございます。それでは早速色々と質問させていただきます。
まずは動機をお伺いしたいのですが、どうして大学院留学をしようと思われたのですか?

山口
僕は日本の大学の学部生だった頃、当時の指導教員の先生がチャンスをくださって、学部2年生から研究室に入り浸らせてもらいました。修士課程に進学した頃からそろそろ環境を変えなければlearning curve、勉強できることが頭打ちになってしまう、と感じ始めるようになりました。そこで、これから何をしようか、どのような新しいことを学ぼうか、と考えた時に、当時は細胞だけを使っていたんですけど、モデル生物を使った発生生物学とイメージングを組み合わせた研究をやってみたいと思いました。その際に世界の一線級のラボを探すことにしました。

程野
ラボを探す際に、海外の大学院に目を向けることは山口さんにとって自然なことだったんですか?

山口
そうですね。僕にとっては自然なことでした。

程野
それでは博士課程出願についてお伺いしたいのですが、出願に必要だったものを教えていただけますか。

山口
必要だったものはみなさんと同じです。TOEFLのスコア、GREのスコア、推薦状三通、成績表、CVとStatement Of Purpose(SOP)です。僕の所属するプログラムは近年GREの使用をやめました。 このようなプログラムは増えてきていると思います。ちなみに、僕は日本国内の奨学金を獲得することができませんでした。つまり、国外の大学院に留学するのに、日本国内から持参できる奨学金はマストではありません。もちろんあるに越したことはないですし、プログラムの財政状況にも大きく依存するのですが。

程野
山口さんのプログラムは合格した人は全員、授業料とStipendを貰えることが約束されていたプログラムでしたか?

山口
そうですね。

程野
TOEFLについてお伺いしますが、山口さんは過去に留学経験等はありましたか?

山口
僕は短期留学等含め、留学経験はそれまで全くありませんでした。 TOEFLは辛かったですけど、決めていた目標の点数を取るまで、とにかく勉強と受験を繰り返しました。

程野
どのように大学院の出願先を決めましたか?

山口
僕はやりたいことがある程度かたちになっていましたし、当時修士課程で、研究論文を読むということは日常的でした。なので、自分のやってみたい研究の方向性に沿って論文を読んで、そのcorresponding authorがいる大学院のプログラムを探すことにしました。その中で、住みたい国や街、自分の持っているTOEFLやGREのスコア、同じプログラムにいる別の教員の研究などを鑑みながら少しずつ絞っていきました。
というのも、ラボローテーションを課しているプログラムですと、1人の教員だけにすごく興味があっても、必ずしもうまくいかないこともあるので、2人なり3人なりこの人と一緒に研究をしてみたいと思える人達がいるプログラムを探し絞っていきました。

程野
何校くらいに出願しましたか?

山口
8つのプログラムに出願しました。 また、大学院ランキングにも一応目を通して、自分の希望する分野で1-50位くらいに志望校が散るようにしていたと思います。

程野
それは、めちゃくちゃ行きたい所、行ければいいかな、滑り止め、のような具合にカテゴライズしたのですか?

山口
少し違います。出願をしたどのプログラムにも自分がついてみたい研究者はいました。彼らは皆一流なんですけど、大学のネームバリューも考えに入れたということです。ネームバリューが高い所ばかりに出願して全落ちしてしまうことも考えられたからです。

程野
意外と簡単に落とされますもんね(笑)。

山口
サクッと切られてしまいますからね(笑) 。そういうことを鑑みた結果、散らして8校に出願しました。

程野
それはアメリカのみですか?

山口
僕はイギリスとカナダにも1つずつ出願しました。イギリスは(2015年当時)EU圏の学生以外には非常に奨学金が限られていて、自分で日本の奨学金等のお金をどうにかして持っていかないと合格は出ないと先方に言われていました。僕はお金がなかなか取れなかったこともあり、イギリスには受かりませんでした。カナダのプログラムには受かったのですけど、そこは審査過程の一番初めに受け入れ予定の教員が受験者を受け入れたいか受け入れたくないかプロジェクトベースでかなり厳しく審査していました。僕の場合はその先生と密に連絡を取っていたこともあり合格が出ました。

程野
それは出願前からその先生と連絡を取っていたということですか?

山口
そうです。

程野
実際に訪問もされましたか?

山口
受験する年の夏にアメリカ国内の4校を訪問しました。8つのプログラムに出願しましたが、どのプログラムにも連絡を取り合っている教員が必ず一人ずついるように事前に研究室訪問をしたり、メールをやりとりしたり、スカイプで話をしたりして、実際にできるプロジェクトをすり合わせたりだとか、どのように自分が研究室に貢献できるかを話しました。これは結構大事なことで、自分の情熱を相手に伝えるのに最も適した方法だと思います。 自分が研究できるということのアピールになりますしね。大変ですし、勇気もいりますが、僕にとって世界的な研究者に自分を売り込むのはエキサイティングなことでした。もちろん。これは出願時に用いるSOPを書く際にも本当に大事な肝にもなりますね。

程野
トップの研究室にいる先生方は多忙だと思いますが、連絡を取るということは可能だったのですか?

山口
はい。僕の場合は、メールでコンタクトを試みた際の返信率は80%くらいだったと思います。メールの書き方ですけど、CVを添付して、自分の研究を1ページにまとめたcover letterのようなものを用意して、彼らの研究のどのようなことに興味があって、どの論文を読んだからアプローチしているのかということを簡潔に2行くらいで書いてメールを送っていました。そしてメールの最後に、もし可能なら訪問させてほしいことや、Skypeで話がしたいというような、先のことを見据えたやりとりを心がけていました。

程野
こっちが真摯にアプローチすれば向こうも返してくれるということですかね。

山口
そうだと思います。いざ僕がこっちのラボに所属してみると、常にボスたちは良い学生やポスドクを求めていると感じます。なので、そのように情熱や真摯な姿勢が伝わると助けてくれると思います。

程野
出願課程で苦労したことはありますか? また、それをどのようにして乗り越えましたか?

山口
僕は留学経験がなかったのでTOEFLのためにコツコツ勉強しました。それはかなりしんどかったです。
また、僕は当時日本の大学の修士課程に所属していました。僕は大学院留学の準備で修士課程の研究を犠牲にすることは絶対にしたくなかったし、それは本末転倒だと思っていました。しかし、出願準備のタイミングと研究論文の執筆と修士論文の準備のタイミングが重なり、本当に苦しかったです。また、背水の陣を敷いたので、修士課程が終わってもどこにも行き先が決まっていなかったのは、クラスメイトの中で恐らく僕だけだったと思います。ちなみにどこにも受からなければ既卒で就活しようと思っていました。メンタルもぼろぼろでした。しかし国外の教員を含む多くの人からの励ましをいただいたのと、ハードワークで乗り越えました。

程野
出願過程で誰かにアドバイスを頂きましたか。もし参考にした本、サイトがあれば教えてください。

山口
数人の日本の先生にお世話になりました。既にアメリカに大学院留学を始めていた高校のクラスメート、直接お会いしたことはないけれどアメリカの大学院留学をしていた大学の先輩、など多くの方を頼りました。また、カガクシャ・ネット著の理系大学院留学の本も持っていましたし、よく読みました。 特に最後にあるインタビューが非常に良かったですし励みになりました。

程野
次に、入学後のことをお伺いしたいのですが、実際に入学して、アメリカの博士課程で優れたシステムだな、と思う事があればあげてもらえますか?

山口
一つ目に授業が優れていますね。最初の二年間はブートキャンプですね。かなり詰め込まれるし読ませられる。でもこれは本当に無駄にはならなくて、後の研究の基礎となる知識を詰め込み、学生たちをまず一定ラインに乗せるという教育ですよね。論文を読んだり折につけプロポーザルを書かせたりすることで、実践的に自分で研究を発展させる能力を鍛えてくれますね。
論文を読んで、まだ残っているクエスチョンは何なのか考えさせて、それにどういう研究手法でアプローチすればいいのか、というようなことを何度も何度も授業を通してトレーニングされるというのは非常に良い点だと思います。時間をとらされるというのはマイナスと言えばマイナスですけども、絶対に無駄にはならないので。
二つ目にコミッティーがしっかりしているところをあげたいと思います。

程野
日本の大学院でいう副査のような立ち位置ですか?

山口
そうですね。
コミッティーは学生と指導教員の間に立つことができる第三者機関で、研究の方向性から学生の次のキャリアの選択など多くのことに関してサポートが得られます。もし、学生と指導教員の間に何か食い違いがあったときに彼らが間に入って問題を解決してくれたり、というようなこともあります。
また、研究者のキャリアでは推薦状が非常に重要になってくるのですが、コミッティーから得られる推薦状も大きな助けになるでしょう。しかし、一方でコミッティーにネガティブな印象を与えてしまうと、大学院生活は苦しくなってしまいます。

程野
コミッティーとはどれくらいの頻度で会いますか?

山口
僕のプログラムでは2年生の終わりにqualifying examがあるのですが、そこで初めてコミッティーが組織されます。それ以降は1年に1回コミッティーミーティング(進捗報告発表会)を持つことが義務付けられています。5年生以降になると、半年に1回の頻度で開くよう推奨されています。卒業時にはコミッティーの前でディフェンスを行います。

程野
コミッティーからは研究に対してアドバイスをいただくことも?

山口
当然ありますね。また、コミッティーのメンバーと廊下で会えば立ち話もしますし、よくその場でディスカッションにもなります。

程野
1年目と2年目の激しいブートキャンプを終えた際に、自分の博士論文に向けたチームを組織する ということですか?

山口
そうですね。サポートチームです。非常に贅沢な体制だと思っています。
三つ目にdiversityをあげたいと思います。既にアメリカの生命科学系の大学院の男女比はおそらく1:1か、もしくは女性のほうが多いくらいかと思います。さらにマイノリティーや留学生も加わり、アメリカ人だけではなく非常に多様な人材が集まります。様々なバックグランドをもつ人と関わり一緒に研究することは大事なことだと思います。
四つ目に学生に対するサポートの厚さをあげたいと思います。僕は有難いことに贅沢しなければマンハッタンで十分生活できるだけの給料を受け取りながら研究に打ち込むことができています。さらに、保険の付与や相場から考えればかなり安い学生寮の提供など、とても有難いと思っています。
五つ目に、質の良いサイエンスが周りにゴロゴロしている、という点を挙げたいです。本当にサイエンスが好きならば、これほど素晴らしい環境はないと思います。一年に何度も、涎が出そうなほど幸せな、凄いこと聞いちゃったな、というようなセミナーがありますね。サイエンスの情報も、論文よりも早くに直接人と話すことによって得られることが多く、とてもエキサイティングな環境だと思います。

程野
セミナーの頻度とかも非常に高いですよね。

山口
世界各国から有名な研究者が来てセミナーしてくれますね。セミナーの後に一緒にランチに行くこともありますし、僕もその場で情報交換をして共同研究に発展したケースもあります。人が動いている、サイエンスのコミュニティの中にいる、というような感覚です。

程野
普段の1日を教えてください。

山口
程野くんは僕の生活習慣をよく理解していると思うけれど、僕はかなり規則正しいレギュラーな生活習慣を心がけています。朝7:30に起床、朝食を食べコーヒーを飲み、毎朝お昼のサンドイッチを作ります。大学院の1日目から同じものを食べ続けています(笑) 。友達にもいじられますが、安く済みますし、考えなくていいですし、あとまあまあ美味しいので続けています(笑)。
サンドイッチを作った後にシャワーを浴びて、9:00にラボにいき、午前中の仕事をします。12:00にラボのメンバーとお昼をとり、12:30頃から午後の仕事を始めます。可能ならば14:00くらいの一番眠くなるときに、水槽を洗ったり魚の尾を切ってDNAをとったりなどの単純労働を入れられるならば入れます。それから夜に顕微鏡の予定がなければ19:00頃ラボを出てアパートメントに戻ってきます。そのあと夕食をとり、トレーニングをして、就寝します。
研究は楽しい一方で疲れる事もありますし、頭も使いますし、うまくいかない事も多いので、なるべく私生活の方はあまり複雑にせずにルーティーンに従うようにしています。創造性の部分を研究に発揮できるよう心がけています。

程野
休日も働いてますか?

山口
そうですね、僕の研究室は休日も働くことが多いですね。必ずしも推奨はされませんが、僕のラボはみんな週末も働いていますし夜も結構遅くまでいることが多いです。

程野
アメリカの博士課程に在籍していて、不満があれば教えてください。

山口
日本から物理的に遠いことですね。家族ももちろん日本にいますし、妻と別居婚なのですが、ほとんど会えません。年に数回会えればいい方ですね。
それと、やはり大学院が長いことですね。当然といえば当然ですが、アメリカの大学院に入ってしまうと、そこからはアメリカ時間で流れます。日本の社会に流れる時間とアメリカの社会に流れる時間は必ずしも対応していないと思います。日本の場合は学部を卒業してすぐ修士に行き、そこから博士課程に行く人は27、28歳頃に博士課程を修了することが多いでしょうが、アメリカの場合は違います。学部を卒業してから大学院に入学するまでの間、ラボでテクニシャン等をして下積みを積むことが多いです。そこから博士課程に入り、そこから5年なり6年なりかかります。これが結構医学生物系では当たり前で、博士号を取得するのは30歳前後ということが多いです。そこからポスドクをするのでやはり時間の流れ方が日本とアメリカで若干ずれてしまいますね。

程野
ズバリ、博士課程で求められる必要な能力とは?

山口
一つだけ挙げるとすれば、僕が最も大事な能力だと思うのは「勇気」です。
例えば出願の際でも、海外の大学院に行きたいと思ってもほとんど多くの人が挫折してしまうと思います。そこで自分を信じて大学院の出願を最後までやりきる。
自分のつきたい教員にアプローチするのにも勇気が必要です。
研究では例えばリスキーなプロジェクトを始める。自分の時間や他の可能性を犠牲にしてできるか分からないことにチャレンジするのは本当に勇気がいることだと思います。
僕の場合ですとゼブラフィッシュを使っていますが、一世代に3ヶ月かかるので1つの実験の結果を見るのに早くて3か月、場合によっては1年以上かかります。それをやるべきか否か。面白い、うまく行きそうだ、と思っても躊躇ってしまう。そこに勇気が必要です。
そして自分の結果に責任を持つにも勇気が必要です。
全部、勇気を奮い立たせないといけないですね。

程野
どのような人がアメリカの博士課程に向いていると思いますか。

山口

敢えて僕は、最初に、「研究が好きな人」と言いたいと思います。博士課程に期待されているものは日本でもアメリカでもかわらないはずだと考えていて、ここは次世代の研究者を育てるための場所ですし、その行為を通して問題解決能力などを鍛える場です。ですから、まずは研究が好きなことが第一です。そして、自分が最善と思う研究やトレーニングの環境を探していたらアメリカに来てしまった、という人がアメリカの博士課程に最も向いていると思います。もちろん、コミュケーション能力が高かったり、英語ができたりするのは大きな助けになるとは思います。しかしやはり、6年ほど毎日毎日ラボに行って研究をすることができる、燃やし続けられる情熱を持っていることが大事です。

程野
所属している研究所で“良い事だな”と思う点があれば教えてください

山口
コミュニティが温かくしっかりしていることです。学生ですが自分がこの研究所の一員である、ということにプライドが持てる研究所です。学生やポスドク、いわゆるトレイニー同士は仲が良いですし、別のラボの教員と立ち話しをすることもあります。それもこれも、僕の所属する研究所には素晴らしい女性研究者の所長がいて、彼女のリーダーシップが研究所全体に行き届いています。学生やポスドクや全ての教員、さらにadministrator等の事務の方にも行き届いています。 質の高いサイエンスを促すと同時に、研究所内の良い雰囲気を保っています。彼女の研究者としてのあり方とリーダーシップを間近で見られたことは僕の一生の財産です。

程野
Skirball Instituteは世界有数の研究所ですが殺伐としているということはないですか?

山口

Skirball研究所は良い雰囲気ですね。所長がかなり心を砕いて気を配ってくれていて、どういう人をリクルートしてくるのかなど全てに関わって、なるべく良い環境を保とうとしてくれています。また、Skirball研究所全体で行くretreatという小旅行が企画されていたり、holiday partyやhappy hourがあることによって 、Skirball研究所として良い研究をしていこうという空気が作られていると思います。

程野

今、描いている博士課程取得後のプランはありますか

山口
ポスドクをするつもりです。アカデミアのトラックを考えていています。

程野
周りの博士課程取得後のキャリアについて教えてください。

山口
様々ですね。ポスドクをする人、インダストリーに進む人、メディカルコミュケーションの仕事を得る人、ファイナンスやコンサルティングに職を得る人、など本当に様々です。
しかし、留学生のキャリア選択が必ずしも現地のアメリカ人たちのキャリア選択と同じであるとは限りません。ビザの問題がどうしても避けられないからです。 アカデミアの場合はそこまでビザを取るのは難しくありませんが、インダストリーに進む際はビザの問題が避けられないと思います。

程野
留学を考えている日本の学生にアドバイスをいただけますか?

山口

10年先をイメージしてみましょう。その時に、大学院留学しなかったことを後悔していそうならば、チャレンジしてみたらいかがですか。
自分が研究者だったらどんな学生と働いてみたいかということを想像してみると、自ずとどのように準備をすれば良いのかわかるのではないかと思います。
真剣さや誠実さというものは不思議と相手に伝わるものみたいです。お互い頑張っていけたら良いですね。

程野

山口さん、貴重なお時間を本当にありがとうございました。
本日、インタビューを受けてくださったのはNYUのSackler Instituteに所属する山口直哉さんで、進行は程野祥太でした。
本インタビューに関することで山口さんに質問がある方はカガクシャ・ネット宛に連絡をください。
それでは、次回の配信をお楽しみに。



(追記 2020年4月)
山口
上記のインタビューが行われました1月から4月までのこの短期間でニューヨークをめぐる状況は一変してしまいました。研究所は3月半ばにシャットダウンされ、現在は外出を控えながらリモートワークでのみ研究を続けています。ありがたいことに、この間プログラムは給料(stipend)、健康保険、寮の提供を維持してくれています。このようなことが起こると、将来海外留学をすることに躊躇するかもしれませんし、それは自然なことだと思います。しかし歴史をみれば、どんな難しい時代にも留学生はいたのだと励まされます。


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インタビュー回答者略歴
山口 直哉(やまぐち なおや)

2015年8月
New York University Sackler Institute of Graduate Biomedical Sciences入学。Skirball Institute、 Developmental Genetics Program所属。
2019年よりAmerican Heart Association Predoctoral Fellow。専門は細胞運動と小型魚類の発生。 

大学院留学などに関しては以下のブログでも扱っています。「生命科学Ph.D留学記(https://n275.wordpress.com/)」
以下のサイトにも大学院留学に関する体験談を寄稿しました。「大志を抱け!海外大学院留学への道(https://hokudaikaigaigrad.wixsite.com/support)」
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カガクシャ・ネットでは山口さんのように研究留学に関してインタビューを受けてくださる研究留学中の方を探しております。協力してくださる方は是非カガクシャ・ネット宛までご連絡ください。


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ご興味のある方は、staff-kagakusha@googlegroups.comまでお気軽にご連絡をお願いします!


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インタビュアー兼著者略歴
程野 祥太 (ほどの しょうた)

2018年 8月
New York University Sackler Institute of Graduate Biomedical Sciences入学。Center for Advanced Imaging Innovation and Research、Biomedical Imaging and Technology Program所属。
2020年1月
The University of QueenslandのCentre for Advanced ImagingのPhDプログラムに編入。専門は超高磁場ヒトMRI。


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発行責任者: 武田 祐史
編集責任者: 日置 壮一郎
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