2013年10月23日水曜日

宇宙工学への憧れから

America Expo(9/21)で配布した冊子「カガクシャネット 海外実況中継」より


2. 「 宇宙工学への憧れから 」 (P4 - 5)


(アラバマ大学・航空宇宙工学・高橋大介)


留学を決断した理由

・宇宙工学への憧れ

私がアメリカ留学を決断した理由は、14歳の時に”今後人類は地球を離れ、火星に移り住む”というテレビ番組に感銘を受けたことです。その時から宇宙開発に携わるという強い思いが芽生え、宇宙開発で最先端の研究が行われているNASAがあるアメリカで航空宇宙工学を学ぼうと決意しました。
また、将来不可欠であると考えた英語を早い段階で習得できると思い、大学院からではなく、大学からの学位留学を決断しました。

・留学に対しての不安

「高校卒業後すぐ留学することに不安はなかったの?」などの質問を多々受けました。「全くありませんでした」というのが私の回答でした。自分の夢を追いかけて、アメリカで学びたいことを学べるなんて、これ以上幸せなことはありません。当時私の頭の中には”アメリカの大学・大学院卒業後、英語を流暢に話し、NASAで宇宙開発の仕事をしている自分”のイメージしかありませんでした。英語も生活も現地に行けばどうにかなるだろうと思っていたため、不安は全く感じませんでした。自分の夢を追いかけていた結果が、留学という行動に現れたのだと思います。

アメリカでの学生生活

・学業

私は大学付属の英語学校で、約9ヶ月間英語を勉強し、大学の授業を受講しましたが、大学の授業を受講し始めたころは、先生の説明や他の生徒の質問などが聞き取れないことが多々ありました。大学1年時に受講する数学や物理などは、既に日本の高校で学んだ内容であったため、内容は理解出来ましたが、経済学、美術、地理など理系以外の科目については授業についていくのに苦労しました。そのため、授業の予習・復習には膨大な時間を費やしました。しっかりと予習・復習を行い、授業に臨むことで、理解が少しずつ深まり、不安も解消されていきました。特に大変だったことは、数百ページある分厚いテキストを読み込むことでした。日本語であれば、それほど時間はかからないはずなのに、英語になると知らない単語が多く、一回分の予習が一苦労でした。

その時思ったことは、“アメリカ人と同じフィールドで勝負しようと決断したのは自分自身である。語学力が不足しているということは割り切り、アメリカ人の何倍も努力すれば、授業に問題なくついていけるはず。”その後は、予習・復習に時間はかかるものの、こつこつと予習・復習を繰り返すことで、授業での理解度も増しました。

大学の1,2年時には各自で課題をこなす事がほとんどですが、3,4年時にはグループで課題やプロジェクトを行うことが増えました。グループで課題に取り組むことで、メンバーの様々な意見や考え方、英語での自分の意見の伝え方、コニュニケーションの取り方など、非常に多くの事を学びました。特に、コンピュータープログラミングと航空力学実験の授業ではグループプロジェクトが多く、困難な課題が多かったため、メンバー皆で、問題解決という目標のために、考え、議論し、悩み、正解を導き出した時の嬉しさは印象的でした。

・勉強する環境

私が通っていたアラバマ大学の図書館は、分野別に5つの図書館があり、各種論文が豊富に取り揃えられており、たとえアラバマ大学の図書館に目的としている論文がなくても、他大学から借用できる仕組みが整えられていました。通常時は7:30~24:00、期末試験中は24時間開館しているため、勉強をするには非常に良い環境でした。

また、学科には24時間使用可能なコンピューター室が備えられており、授業の課題をはじめ、グループプロジェクトなど行う際に頻繁に活用しました。

先生方も生徒の質問に対し快く、丁寧に回答をしてくれ、各授業においては、先生がOffice Hourという生徒が質問できる時間を週に数時間設けています。先生によっては事務所のドアを開放している方もおり、質問をしやすい環境が整っていました。

学期ごとの最後の授業では、生徒が先生の評価を行うシステムがあり、生徒からのフィードバックが次回の授業に反映され、授業の質が向上するよう、大学側も務めています。

・研究

日本の大学の研究室は3年生からというのが基本になっているかと思いますが、アメリカの場合は自分次第で2年次から研究を始めることができます。私が研究室に配属になったのは、学部2年生の時でした。流体力学を受講している際に、当時の教授に勧められ、CFD(数値流体力学)という主にコンピュータシュミレーションを行う研究に1年間従事しました。そして、3年時には新任の教授のもとで、発光塗料を用いた圧力・温度・歪の検出方法の研究・開発を行いました。2年生という早い段階で研究を始め、一つでも多くの研究分野に触れることで、自分の興味がある研究分野を見つけることができ良かったと思います。早く行動したことで、研究分野を選択する際に、より有利な選択ができたと思います。

各研究分野で様々な学会があるため、研究発表の機会は豊富にあります。学生によっては3年生から発表する方もいます。私は大学4年時及び修士1年時にそれぞれ学会で研究を発表しました。4年時には学生部門の学会で、歪の検出方法について発表し、準優勝をしました。日々の地道な研究の積み重ねが、評価された瞬間でした。

私が所属していた研究室は、教授のもとに3名の大学院生しかおらず、規模の小さい研究室でした。(大学によっては1つの研究室に数十名の学生が所属している研究室もあります。)そのため、教授への質問・相談は頻繁に行うことができ、研究の方向性についても随時確認することができ、教授と密な関係を築くことができました。家族ぐるみでお付き合いをさせてもらい、今でも良好な関係が続いています。

・部活動

学業・研究以外の分野にも幅広く挑戦してみたいと思い、大学4年時にトライアスロン部に入部しました。高校でトライアスロンや陸上競技をやっていたわけでなかったため、一からのスタートです。朝の練習は6:00から水泳の練習、放課後はランニング・自転車の練習を行いました。トライアスロン部のメンバーは皆学業にも真剣に打ち込んでいたので、部活が忙しいから学業をおろそかにして良いという考えはありませんでした。逆に、皆学業で忙しい中、練習の時間を上手にとって試合でも結果を残すメンバーが多かったため、私自身、以前より忙しくなりましたが、時間の使い方が上手になりました。

なんといっても友達の輪が広がったことが良かったです。練習や試合中、お互いに声を掛け合い切磋琢磨し、遠征を通しチームとして行動するため、強い絆が生まれました。

・私生活-

充実した学業・研究・部活動に加え、私生活でも負けないくらい充実した楽しい学生生活を送ることができました。アメリカの学生はオン/オフの切り替えが上手なため日曜日の午後から金曜日までは学業に励み、週末はリラックスや思いっきり遊ぶという生活スタイルです。週末は友達と映画を見たり、ホームパーティに参加したり、大学のスポーツ観戦に活きました。特にフットボール部は、地元の根強い人気と、2010年、2012年に全米チャンピオンに輝いたという実績があり、ホームで試合があるときは、大学周辺がフットボール観戦者であふれ、通行止めになる道路もあるほどで、とてもにぎやかです。日本で言うならば、コンサートやライブからの帰りか、大きな花火大会に行ったかのような人ごみです。フットボールスタジアムは約10万人を収容でき、試合中はスタジアムが揺れているかのように感じられるほどの応援で、日本では経験できないほど熱狂的な応援を体感しました。

ハロウィン、クリスマス、ニューイヤーパーティーなど季節によって様々なパーティーがあり、日本にいては味わえない特別な経験をしました。

・奨学金

アメリカの大学には充実した奨学金制度があります。アメリカ人向け、アジア人向け、各専攻向けなど種類は様々で、日本人学生が応募できる奨学金も数件あります。私は学部時代に小額の奨学金を数件、大学院時代に授業料・生活費全てを賄ってもらえる奨学金を取得しました。その時に感じたことは、アメリカは将来、可能性のある学生に惜しみない投資をするということでした。結果には厳しいアメリカ社会ですが、結果さえ残せば、平等に評価してもらえ、機会を提供してくれるのです。返済不要の奨学金に恵まれたアメリカの大学では、学生時代の努力が、経済面でも報われることになります。

・ユニークな仕組み

アメリカの大学には様々なユニークな仕組みがあります。日本の大学は4年間で卒業、4年次に卒業研究というのが基本になっているかと思いますが、アメリカの場合は全て自分次第です。

まず、アメリカでの研究については、RA(Research Assistant)というポジションがあり、教授の判断で生徒を雇えるため、学生自らアピールすることで、2年時から研究に参加でき、3年時に研究発表できる機会があります。上記に述べたように、私は2年次から研究に関わらせてもらいました。

第2に、卒業までの期間です。アメリカの大学は卒業単位を取得すれば卒業が可能であるため、2年で卒業する学生もいれば、インターンシップをおりまぜ、5年で卒業する学生もいます。私は大学・大学院とアラバマ大学に通っており、学部4年時から学部の授業と並行し修士の授業を履修したため、学部卒業後1年間で修士課程を終了することができました。学部4年時に周りの学生より多く授業を取り、修士論文の準備をはじめなければならなく、学業・研究に追われる日々が続きましたが、その努力が報われ、修士課程を1年で終了することが出来ました。

また、インターンシップに参加し、授業で学んだことを、実践を通し活用する事ができます。その他には、必須科目でも十分に知識があれば、試験のみ受け、単位を取得できる仕組みもあります。以上のように、アメリカの大学では生徒の目標・努力次第でいかなる方向にも進むのです。

卒業後のキャリア

私は2008年に修士課程を終了し、現在は日本で航空機エンジンの製造/整備の仕事をしております。留学前の夢である”宇宙開発に携わる”業種ではありませんが、幸運にも、留学中に身につけた航空宇宙工学の専門知識及び英語を十分に活用できる環境で仕事をしています。様々な国の方々と接し培ったコニュニケーション能力や、何もかもが初めての経験の中で学んできた適応能力は、今後国境をまたいで仕事をする機会が増える中では、より活かされるでしょう。

今後留学を目指す方々へのメッセージ

2002年3月に渡米した際は、片言の英語しか話せず、スーパーでの買い物すら一苦労で、一日一日を生きていくことが日々の挑戦でした。そんな私が2007年に行われた学生部門の学会で研究発表を行い、準優勝し、2007年、2008年には全米大学トライアスロン選手権大会に大学代表とし出場することができました。ここで皆さんにお伝えしたいことは、人間やれば何でもできるということです。目標を持ち、努力をし続ければ、必ず報われ、実現します。

みなさんも一度きりの人生、夢に向かって挑戦しませんか。

“Try Hard, Work Hard, Believe Hard, then Dreams Come True” 6年半のアメリカでの留学生活が私に教えてくれたことです。


著者略歴:高橋大介 (たかはしだいすけ)
2002年3月に高校卒業後、渡米。米州立アラバマ大学(University of Alabama, Tuscaloosa) 付属の英語学校で 9ヶ月間の語学研修を経て、2003年1月にアラバマ大学に入学。専攻は航空宇宙工学。2007年5月にsumma cum laudeで卒業、翌年の5月に同専攻で修士課程 修了。研究内容は発光塗料を用いた非破壊検査の開発。2008年10月より、国内大手機械メーカーにて航空機エンジンの整備/開発の生産技術に従事。

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