2014年1月25日土曜日

アメリカ研究サバイバル(後)カバーレター作成と面接時に見るべき点


※今回は過去のメルマガから人気の記事(2009年4月 Vol.45 No.1, Part 2)をピックアップして配信しています。

前回に引き続き、杉井さんが、「Ph.D. 取得後のキャリアを成功させるには」を紹介してくれます。前回は、博士号取得後にポストドクターの道を選ぶ場合の準備編として、ポスドク先の選び方、希望ラボの情報収集の仕方、そして連絡の取り方に関して話してくれました。

アメリカ研究サバイバル(前)良いポスドク先を見つける方法

今回は、その続きの実践編です。実際に応募する際に必要となるカバーレターの書き方、面接に呼ばれた際にチェックすべき点、面接後にもしっかりコンタクトを取ること、そしてまとめです。では、お楽しみ下さい!

Ph.D. 取得後のキャリアを成功させるには~様々なケースから学ぶこと

アカデミアで研究を続ける場合:カバーレター作成と面接時に見るべき点

●カバーレターの書き方

希望ラボがいくつか決まったら、アプライの手紙を書きます。このときのカバーレター作成は、非常に重要です。重要ポイントは、


  1. なぜその研究室に興味を持ったか
  2. 自分の簡単な研究歴
  3. その経験と知識がどうして志望ラボに貢献できるのか


です。これを簡潔かつ網羅的に、1ページにまとめます。その研究室のことをどれだけ知っていて、そこに行きたいか、情熱を示しましょう。ほとんど「コピー&ペースト」しただけのカバーレターを、やみくもに何十カ所(人によっては百以上)も送りつける人たちがいますが、採用側もすぐ見抜きますので、時間の無駄です。この「逆」の方法を行うべきなのです。

場合によっては、1ページしかないカバーレターに加えて、希望する研究室でやりたい研究の志望動機・内容について1-2ページ書くと、さらに真剣に考慮してもらえる可能性が増します。ただ、志望ラボの方向性と違ったことを書くと、逆効果にもなりがちなので、そのラボのことについてよく分かっていて、相応の時間をかけられる場合のみ、考慮してください。

私のカバーレターの例では、必須ではありませんが、「過去に会ったことがある」という売りを書いてあります。他にも「今のボスや知人の知り合いである」とか、「誰々に薦められた」など、何らかのつながりがあれば、必ず書くことをお勧めします。その「知人」や、会ったときの「あなた」に悪い印象を持っていない限り、有利に働くことでしょう。

また、もう一つの文例にある通り、「雇ってもらえたら自分から進んでフェローシップ(奨学金)を取る旨」をカバーレターに書くのも、好意的に見るボスは多いと思います。ポスドクのフェローシップで代表的なのは、日本からの留学の場合、例えば「海外学振」や「上原財団」などです。

この時世、研究資金のやりくりに苦労しているラボ主宰者が多いので、もっともお金のかかる人件費を、自分からまかなう姿勢を打ち出すと歓迎されることでしょう。ただしこの場合、どのようなフェローシップに応募できるのか、しっかりと自分で調べておく必要はありますし、足下を見られて「フェローシップが取れたら」という条件付きで雇用が決まらないように、注意する必要もあります。

●インタビュー時にチェックすべき点

運良く良い返事が来たら、次にインタビューとなります。電話や学会場でインタビューということもありますが、何としてもラボを直接訪問してください。メンバーの人たちと直に話ができる、絶好の機会です。アメリカ国内だったら旅費が出るのが一般的です。

日本にいる人でも、学会のついでなど、何とか理由を作って、訪問する機会を作ってください。数年を過ごす場所ですし、将来にも関わってきますから、長い目で見ればそれだけのことをする価値はあります。

ポスドクの面接では、自分の研究成果発表のセミナー、ラボメンバーとの個別面談、ランチやディナー、そしてボスとの面接、というのが一般的なメニューです。

良い印象を与えるためには、万全の準備をして、良いセミナーをするのは当然のことですが、ポスドクインタビューの場合、実はかなり重要なのが、メンバーとの個別面談(ランチやディナーを含む)です。

研究の話も重要ですが、それ以上に、ボスがどのようにラボを運営しているか、ボスの人間性、メンバーの進路、ラボの雰囲気、メンバーが生活・研究環境に満足しているかどうか、このような事柄を伺い知ることのできる世間話をした方が、より後々の参考になることでしょう。また、希望先のラボメンバーで、気が合いそうな人が見つかったら、Eメールなどの連絡先を聞いておくと良いでしょう。

そして、気に入ったラボのボスには、自分がどれだけ興味を持ったかできるだけアピールして、インタビュー当日を終えます。

●面接後にはお礼を

しかし、面接はこれで終わったわけではありません。

家に帰ったあと、面接に呼んでもらったお礼と、再度そこのラボにどれだけ行きたいかをアピールするべく、「サンキューレター」を書いてEメールで送りましょう。人気ラボの主宰者には、「面接では人柄がとても気に入ったんだけど、そのあとのフォローアップレターがなくて、がっかりした」と言う人が結構います。志願者が殺到しているラボでは、わざわざそういう人を選ぶ必要はありませんから、取りこぼしのないようにしてください。

●まとめ

さて、2回にわたって書いてきましたが、もし「ポスドクの就職活動を成功させる秘訣」を一言で表現してください、と聞かれたら、私は「相手の立場に立って考えること」と答えます。これは、ポスドクに限らず、他の就職活動にも言えるかもしれません。

博士号を取ったばかりで、研究室の主宰者の考えなんてわからない、という人も多いでしょうが、たとえば今所属しているラボでも、つねに自分のボスの立場や考えを学んだり、研究室を運営している人の身になって考えるくせをつけていれば、自然とボスの考えていることがわかってくると思います。そうしたら、自分にどんなことを求められているのか、向こうのニーズに的確に応えることができるようになり、スムーズに就職活動を進めていくことができるようになるでしょう。

最後に、主宰者の立場を理解するのに最適な良書を紹介します。

- アット・ザ・ヘルム - 自分のラボをもつ日のために

- Lab Management: Making the Right Moves
(Howard Hughes Medical Institute / Burroughs Wellcome Fund 刊、英語)


自己紹介

杉井 重紀
1996年京都大学農芸化学科卒業。卒業後、UCバークレーで聴講生(浪人生活?)を経て、ダートマス大学分子細胞生物学プログラム博士課程に在籍。2003年に博士号取得後、カリフォルニア州サンディエゴ近郊にあるソーク研究所に ポスドク研究員として勤務中。 2000年より、カガクシャネット代表をつとめる。

編集後記

先日、同じ研究室の友人が博士論文発表・提出を終えました。彼は企業就職希望ですが、やはりこの経済不況で、なかなか仕事探しに苦労しています。そんなとき、ツテを辿ってある企業に採用に関して問い合わせたところ、その企業で働いている彼の知人3人が、「彼のことを採用すべきだ!」と揃って人事部に掛け合ったそうで、雇用は凍結中にも関わらず、彼のためのポジションを新設するために動いているそうです。やはり人との繋がりは大事だな、と改めて感じました。(山本)


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カガクシャ・ネットワーク http://kagakusha.net/
発行者: 山本智徳
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