2013年12月15日日曜日

アメリカ研究サバイバル(前)良いポスドク先を見つける方法

※今回は過去のメルマガから人気の記事(2009年3月 Vol.45 No.1, Part 1)をピックアップして配信しています。

前々回(アメリカ企業就職サバイバル(前) レジュメの書き方)前回(アメリカ企業就職サバイバル(後) カバーレターの書き方、インタビュー)と、青木さんがアメリカの企業でのサバイバル術に関して書いてくれましたが、今回はアカデミックバージョンです。杉井さんが、大学院修了後の、良いポスドク先を見つける方法・実際の応募方法に関して、2回に渡って執筆してくれます。今回のメルマガでは、どうやって自分に合ったポスドク先を見つけるかです。ポイントとしては、大学名ではなく研究室(の主宰者)で選ぶこと、その研究室の卒業生の進路を考慮した上で選ぶこと、また、研究室主宰者の人間性をよく知ることです。これまでにメルマガで繰り返し出てきたように、コネを最大限生かすことが成功への鍵になりそうです。では、お楽しみ下さい!

Ph.D. 取得後のキャリアを成功させるには~様々なケースから学ぶこと

アカデミアで研究を続ける場合:良いポスドク先を見つける方法 

日本でもだんだん一般的になってきましたが、一人前の研究者を目指す場合、海外では博士号取得後、さらに数年の間、「ポストドクター研究員(通称・ポスドク)」として、研究することが普通です。

現在アメリカでは、アカデミアの研究者を目指す人たちはいうまでもなく、企業の研究者や、政府の科学系業務に携わる役人、研究雑誌のエディターまでもが、「ポスドクの経験」を求められることが一般的になりました。

よくある理由としては、「研究経験を多く積んだ人材の方がより良い仕事ができるから」。・・・聞こえはいいですが、実際のところは、博士号取得者が有り余っていて、これらの職の定員(需要)に対して、供給が多すぎるというのが本当の理由です。

ですから、博士号を取る十分前から、 将来自分が何をしたいか、研究に対してどれだけの興味と情熱があるかをよく考えて、ポスドクをするかどうか決めてください。博士号に5~6年費やしたのち、さらに貴重な数年(最小1~2年から最大10年~∞年?)を費やすことになるのですから。

それでも将来設計から、海外でポスドクをして研究生活を送りたいというのなら、みなさんがよいポスドク先を見つけられるよう、私の限られた経験と見聞から、アドバイスしたいと思います。

あくまで私の分野のバイオ系、しかもアメリカでの話が中心で、他の分野や国では、状況が違うこともありうることを、あらかじめご了承ください。皆さんの知り合いに経験者がいれば、積極的にコンタクトを取って、複数の人たちから話を聞くことをおすすめします。


一般的なポスドク先の探し方

ポスドクは、大学院生のとき以上に、所属ラボへの依存度が高くなります。大学院のときはコースワークもあったし、自分のボス以外にコミッティメンバーが複数いたし、クラスメートがあちこちのラボに所属しているので、いろいろなコンタクトが持てます。

しかし、ポスドクの生活は、ラボでの研究が9割以上を占めるのが普通です。従って、そのラボのボスの人格・研究能力・経済力によって、自分の将来までもが左右されることを頭に入れておいてください。間違っても、ラボが所属している大学(研究機関)の名前で決めたりしないでください。学生の場合とは違って、「大学ランキング」は意味がありません。

いわゆる一流大学のラボでも、 研究活動が低調で大学内では蔑まされていて、明日にはどうなるか分からない研究室もあります。逆に、聞いたことがない大学・研究機関でも、ラボのボスが超一流の研究をしていて、所属機関の全面的なバックアップを受け、飛ぶ鳥落とす勢いのところもあります。

ラボを選ぶ際に、最も活用されていて手っ取り早い方法は、 Science 紙をはじめとするジャーナルが設けている求人コーナーを見ることです。また、ラボが所属している各大学機関のウェブサイトに求人が載っていることもよくあります。

しかし、それだけでは、いわゆる「人気ラボ」の求人を見つけることは困難です。そこで、次に、自分の希望分野で高インパクトのある論文を多く出している科学者、学会で高く評価されていたり賞を多くもらっている科学者などをリストアップします。

進路を踏まえたポスドク先の選び方

さて、先に「将来の進路を考えて」ポスドクを考慮する、 と言いましたが、これには別の理由もあります。それによって、どんなポスドク先を選ぶべきかが決まってくるからです。

将来アカデミアの研究者でやっていきたいのなら、出身者のほとんどがアカデミアのポストに進んでいるラボを選ぶべきです。それだけ、そのボスが熱心にアカデミア行きを後押ししているか、アカデミアでの大きなネットワークを持っているという可能性が高いです。

企業の研究者になりたいのなら、 希望する業種への就職に強いラボを選んでください。特に、ボスがベンチャー企業を経営していたり、特定企業のアドバイザーをつとめていたりしていたら、グッドサインです。前回のコラムを執筆された青木さんもおっしゃっていましたが、アメリカでは企業就職は、アカデミア就職以上に、「コネ」「ネットワーク」が有利に働きます。

* 参照:アメリカ企業就職サバイバルのためのアドバイス (前編) (後編)

余談ですが、大学院在学中の人脈も大事にしてください。後々、役に立つかもしれません。

ラボ決めで考慮すべきポイント

さて、次は希望ラボのリサーチです。繰り返しになりますが、 キャリアを考えたときに最重要なのは、そのラボの出身者がどういった進路に行っているか、ということです。

それから、ボスの人間性です。ラボヘッドの人格次第で、ラボの雰囲気もずいぶん違ってきますし、気分よく仕事ができるかどうかが左右されます。しかも、まわりからの人望が厚いボスのもとで働いてきた弟子は、就職の際に引っ張りだこになりやすく、得をします。

「研究内容が興味持てるかが一番重要だろ?」 という方もいるかもしれませんが、キャリアの観点では二の次です。それに、論文発表されていたりウェブサイトに書かれている内容は、すでに昔の話になっていて、今は新たな方向性の研究をしていたりすることがよくあります。それが現在進行形で行われたとしても、すでに所属している研究室メンバーが着手していて、新メンバーには回ってこない可能性も高いです。

研究の興味というのは、時間とともに変わっていく水物です。それに、もし大学院でやっていた研究の延長線上だったら、視野を広げるという点では、良いことではありません。特定の研究に固執する人よりも、臨機応変に考えられる人の方がより成功していくのを、多く見てきました。

自分がある程度フレキシブルであれば、優秀なボスというのは、サイエンスの分野でホットになるトピックを選別している、もしくは自ら作り出していることが多いので、こういったボスのもとで働いている限り、将来の研究内容を選ぶうえで困ることがあまりないのです。

さて、リサーチの話に戻りましょう。興味のある研究室がホームページを持っている場合、事前リサーチは楽になります。しかし、評判の良いラボでホームページを持っていないところや、あっても長いこと更新がなされておらず、古い情報しか載っていない場合も多くあります。

この場合は、何とかして「コネ」を見つけだします。「コネ」と言うと仰々しく聞こえるでしょうが、例えば友人の知り合いとか、ボスの友人とか、薄いつながりでも十分です。

現在所属している人を見つけるのがベストですが、 そうでなかったら、過去に所属した人でも良いでしょう。あと私の経験では、日本人が所属していてメールアドレスが分かる場合、メールしたら返事してくれる確率が高いです(だいたい8割くらいでしょうか)・・・同じ日本人として、協力し合えるというのは、何ともすばらしいことです。返事してくれたら、お礼のメールもお忘れな
く。

今現在の自分のボスにも、最大限アドバイスを求めてください。また、ボスの個人的なつながりを利用できれば、有力ラボへの「近道」になります。

応募に備えての準備

さて、そうやって希望研究室をリストアップしたあとは、 自分が各々のラボにどうやって「コントリビュート(貢献)」できるか考えます。そのためには、それぞれのラボの研究プロジェクトを研究し、自分の研究してきた分野の知識や実験手法を取り入れることができるかどうか、考えます。

例えば、生物医学系の研究室では、有機化学の合成をできる人、ナノテクノロジーをバイオテックに応用できる人、膨大な遺伝子データなどを解析できるバイオインフォマティシャンなどを、探している可能性があります。ここまで違う分野でなくても、他の人とはなるべく異なるバックグラウンドを持ったメンバーを、優秀なボスは求めていることが多いのです。

さて、希望ラボと自分がしたいプロジェクトが決まったところで、 次回は、アプライの手紙の書き方、インタビュー、オファーを獲得する方策について、引き続き書いていきたいと思います。


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執筆者紹介
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杉井 重紀
1996年京都大学農芸化学科卒業。卒業後、UCバークレーで聴講生(浪人生活?)を経て、ダートマス大学分子細胞生物学プログラム博士課程に在籍。2003年に博士号取得後、カリフォルニア州サンディエゴ近郊にあるソーク研究所に ポスドク研究員として勤務中。 2000年より、カガクシャネット代表をつとめる。


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編集後記
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WBCは日本が優勝して、本当に良かったです。私はサンディエゴに在住ですので、ペトコパークでの第2次ラウンドは子連れで応援しに行きました。観衆はそれほど多いとは言えなかったですが、売店ではグッズが飛ぶように売れていて、JAPANの帽子は完売。しょうがないので、Tシャツとキーホルダーを買いました。日本人観客・一人一人の真剣さが伝わった感じです。最強と言われたキューバ相手にあれだけの完璧な試合運びができたのですから、日本の強さは本物です。永遠のライバル、韓国との決戦もドラマになりました。苦しんでも、ここ一番というときに決められる、イチローのようなリーダーが、他の分野でもほしいところです。(杉井)


日本では、間もなく新学期のスタートですね。このメールマガジンも、新学期のスタートからはやや遅れますが、もう間もなく、第3弾がスタートします。先日のみなさんから頂いたアンケート結果をもとに、執筆陣で話し合ってきました。これまで以上に、みなさんのご期待に答えられればと思います。どうぞお楽しみに!(山本)


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2013年12月8日日曜日

アメリカ企業就職サバイバル(後) カバーレターの書き方、インタビュー


※今回は過去のメルマガから人気の記事(2009年2月 Vol.44 No.1, Part 2)をピックアップして配信しています。


前回「アメリカ企業就職サバイバル(前) レジュメの書き方」に引き続き、今回も「アメリカ企業就職サバイバルのためのアドバイス」に関しての記事です。前回は、仕事を見つけるために重要なのはネットワーク作りであること、そして実際にレジュメを書いてみること&その書き方、に関して書いてくれました。今回は、レジュメと同様に大事な、カバーレターの書き方、そして実際にオファーをもらった際の、それ以降の交渉に関してです。今回も多くの例と共に紹介してくれるので、非常にわかりやすく、明快だと思います。どうぞ、お楽しみ下さい。

カバーレター

レジュメを書いたことがあるという人はおられるかもしれませんが、アメリカで仕事に応募する上で欠かせないものとして、カバーレター(Cover Letter)が挙げられます。カバーレターとは、レジュメに添えて就職を希望する会社に提出する手紙で、以下の点について書く必要があります。

  • あなたがレジュメを提出する理由
  • あなたが応募しているポジション名
  • どのようにそのポジションのことを知ったか
  • あなたのそのポジションへの適性を、これまでの教育・技術・経歴などから説明する

つまり、カバーレターは自己紹介の手紙で、応募するポジションごとに書く必要があります。日本では、仕事に応募するというよりも、会社に応募するのが一般的で、応募の段階では、具体的にどのような仕事につくのか分かっていない場合が多いでしょう。しかし、アメリカの場合は、各ポジションごとに適任の人を雇います。そして、レジュメとカバーレターにより、自分がどれほどそのポジションに適しているかを説明する必要があります。

以下、例を考えてみましょう。仮にあるハイテク企業が、材料評価法であるエックス線回折 (x-ray diffraction)、電子顕微鏡法(TEM、STEM、SEM など)、分析電子顕微鏡法(EELS、EDS 法)、集束イオンビーム法(FIB)に詳しい材料科学者(Materials Scientist)の募集をし、以下のような求人広告(Job Posting)を出したとします。

REQUIREMENTS (例):

  • Competence with TEM and STEM techniques for solving materials science problems as related to industry.
  • Hands-on operation and some routine maintenance of such systems.
  • Working knowledge and expertise in EDS and EELS analysis.
  • Interpret results as it impacts processes and material development for recording heads, MRAM, MEMS, and other related programs.
  • Additional knowledge and expertise in XRD, XRR and Dual Beam preferred.
  • Minimum of a M.S. degree, Ph.D. preferred in Material Science, Physics related field.

このポジションに応募するとして、サンプルのカバーレターを書いてみました。うまく書けているかどうか分かりませんが、一応アメリカ人にもチェックしてもらいました。ご意見・批評などありましたら、お願いします。

ジョブインタビュー

募集先が、レジュメ・カバーレターを通じて応募者に興味を持つと、まず電話でのスクリーニング、つまり篩(ふるい)に掛けることがよくあります。担当部署のマネージャーが電話を掛けてくる場合もありますし、人事担当からの場合もあります。このスクリーニングをパスすると、ようやくジョブインタビュー(Job Interview)となります。多くの場合(絶対ではないですが)、面談に掛かる費用、例えば交通費(飛行機・レンタカー代)や宿泊費は、会社側が持ってくれるのが一般的です。

ジョブインタビューの際には、グループで面接したり、一人ずつ何人もの人と面接をしたり、プレゼンテーションを頼まれたりします。これにより、会社側は候補者がどのような人物なのか、どのような技術・知識を持っているのかを見ようとします。また、面接を受けている人にわざとストレスを与え(例えば、難しい質問を連続で浴びせたりする)、どのような反応をするか見る会社もあると聞きました。

ジョブインタビューに際しては、事前に会社の事業内容、経営者や研究者について調べ、さらに応募しようとしているポジションに要求される技術・知識などについてしっかりと理解しましょう。そして、予想される質問に対して、自分なりの回答を準備しましょう。少なくとも、レジュメに書いたことに関しては、何でも質問に答えられるようにすると良いと思います。また、質問に答える際には、あなたのレジュメ・カバーレターに書いてある経験・知識・技術、そして業績と応募しているポジション・会社との関連付けを行うようにしましょう。つまり、あなたがそのポジションにぴったりの人物であることを印象付けるように、努力する必要があります。

また、ジョブインタビューでは、雇う側があなたを面接するわけですが、あなた自身がその会社をインタビューする機会でもあります。予想される質問への答えだけではなく、面接の際に訊く質問をたくさん準備しましょう。ジョブインタビューの際に、面接者に様々な質問をしていく過程で、職場の雰囲気や自分の上司となる人、あるいは同僚の性格など、多くのことを知ることが出来ます。特に、同僚がどの程度、会社や上司、そして仕事内容に満足しているかを知ることは、あなたがオファーをもらった際に、最終的に受諾するかどうかを決める上で、重要な判断材料となるでしょう。

初任給・給料についてリサーチ

面接に行く前、もしくはオファーを受ける前に必ずやるべきことは、応募しているポジションのその地域での平均的な初任給・給料についてリサーチをすることです(転職者の場合は、アプライしようとしているポジションの平均給与を調べます)。同じ名前の仕事でも、初任給・給料は、分野・地域・学位によっても異なります。以下のリンク先や所属学会のウェブサイトなどを使ってリサーチをし、データに基づいた数字を頭に入れておくと良いと思います。




私の分野に近い物理系であれば、Ph.D. の初任給は、2003-2004年のデータで、$68,000ドル~90,000となっています(数年前のデータですから、今はこの額よりは少し高くなっていると思われます。私の予想では、$72,000~95,000程度)。生活費の安い地域では、$68,000ドル~80,000、ニューヨークやカリフォルニアなど、生活費が高い地域では、$90,000(今ならば$95,000程度)に近い給料が期待されます。その地域での平均的な初任給を知っていれば、オファーをもらった時にその条件を評価するのに非常に助かります。

以下、アメリカ物理学会のデータです。

http://www.aip.org/statistics/trends/reports/emp.pdf

仕事のオファーをもらっていない段階で、給料をどれくらいもらえるかを尋ねることはタブーとなっています。また、面接もしていない段階で、応募先が希望給料額(Salary requirement)を、メールや電話などで尋ねてくることがあります。この際には、失礼にならないように、具体的な数字について言及するのは避けましょう。メールの場合などには、Salary の欄は空欄にするか、「面接の際にお話します」のように断っておくと良いと思います。

また、転職希望者の場合、オファーをもらう前の面接の際に、現在の給料はいくらか尋ねられると思います。応募先は、その額を基に人選・オファーを考えるわけですが、この情報は出来れば相手側に与えたくないところです。なぜならば、現在の給料が応募先の会社の考えている額に対して多すぎる場合は、それだけで対象外となるかもしれませんし、額が少ない場合は、オファーの額を少なくされてしまう可能性もあるからです。そのため、"I am making a com-petitive salary for a Materials Scientist with 5 years of experience." のように、できるだけ具体的な数字を避けた方が良い、とアメリカ人からアドバイスを受けました。もちろん、具体的な数字を面接者に言わないといけないこともあるでしょう。その場合は、相手がその数字についてどう思うか尋ねるなどして、情報が一方通行にならないような工夫をすると良いと思います。

実際に面接を終え、最終的に会社側があなたに仕事をオファーすることを決めると、例えば

"We are pleased to offer you the position, Materials Scientist at an annual salary of $85,000"

というように、具体的な給料額の提示を受けます。

オファーを受けたら、給料を含めてオファーの内容をしっかり確認するようにしましょう。引っ越しが必要な場合は、どのようなサポートがあるのかも重要な項目です。例えば、引っ越し屋のサポートはあるのか、車の輸送費は出るのか、飛行機代はでるのか、などです。不明な点はその場で質問するか、後から電話して確認すると良いと思います。そして、その内容を実際にオファーレターとして(電子メールではなく、ハードコピーして)送ってもらうようにしましょう。

提示額に不服のある場合は交渉

オファーをもらったら、リサーチに基づいて評価してみて下さい。提示額に不服のある場合は、交渉をすることも出来ます (Salary Negotiation)。その際には、自分がいくら欲しいかを訴えるのではなく、「市場でのあなたの学位、経験などに基づいた適正給料」に集中することをお勧めします。つまり、「データによると、・・・市近郊での Ph.D. の初任給は$xxxになっていますが、いかがお考えでしょうか」のように聞くのが良いでしょう。

参考までに、実際に受け取ったオファーレターの最初のページを紹介します。なお、一部の情報は伏せさせていただきました。

お金について少し書きました。もちろん、お金が一番大切ではないかもしれませんが、自分の好きな仕事をすることで自分の価値・業績をきちんと評価してもらい、それに応じた待遇を受けることは、素晴らしいことだと思いませんか。そして、アメリカは、研究者であろうと自分の価値・仕事を正しく評価してもらうために、きちんと自分の考えを述ベることが出来る国です。

話は大きく変わります。日本では終身雇用制が崩れつつあると聞きますが、それでも一生同じ会社に勤める人はまだ多いと思います。きちんとしたデータは無いようですが、アメリカでは平均で一生のうち4~5回転職すると聞きます。転職の目的は、より良い仕事と待遇、つまりステップアップです。もちろん同じ会社に何十年も勤めている人もたくさんいます。キーとなるのは、自分の仕事・環境・待遇がどれだけ好きかということだと思います。

自分が就職活動をしているときに、就職斡旋のプロから、「最初の仕事は、必ずしも夢の仕事ではないかもしれない」と言われました。つまり、そのプロによると、卒業してすぐ夢の仕事につければ本当にすばらしいが、そうでないからと言ってがっかりすることはない、とのことです。その場合、将来的に、夢の仕事につくためにプラスになる経験を積む努力することで、夢の仕事を目指し続けることが出来るわけです。私の知人で、2回目の転職で、ようやく夢の仕事につけたと言っている人がいました。こういうことは良くあることだそうです。

夢の仕事につくために一番大切なことは、実力を身につけることだと思います。実力とは、ただ単に勉強、研究、仕事が出来ることを指すのではありません。それらに加えて、人間関係の技術、チームワーク力、リーダーシップ、幅広い知識、語学力など、様々な面でプロフェッショナルあるいはビジネスパーソンとしての力をつけていくことであり、その努力をすればきっと道は開けていくことと思います。

この点につきまして以下のメールマガジンバックナンバーをご参照ください。
* 【海外サイエンス・実況中継】Vol. 36, No. 1, Part 1およびPart 2

このようなエッセイを書いてきましたが、私自身もまだ自分の夢に向かって前進している途中だと思っています。内容に、不備・至らないところがあろうかと思いますが、ご了承ください。このエッセイが、アメリカで就職・夢の実現を目指している方々の何らかの参考になったり、日本を飛び出して、海外で自分の力を試してみたいと思われる方々の一助になれば幸いです。



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編集後記
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只今バケーションで、日本の家族と共にモニュメントバレーに来ています。明日からはグランドキャニオン、ブライスキャニオン等に向かいます。初めてグランドキャニオン、モニュメントバレーを訪れたのはアリゾナで貧乏大学院生をしていた2001年。広大な大自然に身が震えるほど感動しました。そして、大学院での自分の苦労がとても小さなものに感じ、絶対に頑張るぞ、という思いが湧き上がって来たのをおぼえています。あれから8年の月日が経ちました。その間、大学院を無事卒業し、現在はプロフェッショナルとして働いていますが、今回の旅はいわば私の原点・Sanctuaryに戻る旅。特別な想いを感じています。混沌とした先の見えない世の中、自分の原点・Sanctuaryにて自分を見つめなおすと共に5年後、10年後の自分のビジョンについて考えてみたいと思っています。皆様も自分のSanctuaryをお持ちでしょうか?(著者)



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執筆者紹介
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青木敏洋 (Toshihiro Aoki)
カガクシャ・ネットでのタイトル: カガクシャ・ネットアドバイザー

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2013年12月1日日曜日

アメリカ企業就職サバイバル(前) レジュメの書き方


※今回は過去のメルマガから人気の記事(2009年2月 Vol.44 No.1, Part 1)をピックアップして配信しています。

さて今回は、アメリカで企業に勤務されているカガクシャネットのメンバーが、「Ph.D. 取得後のキャリアを成功させるには~様々なケースから学ぶこと(総編集前編 / 総編集後編)」に関連して、アメリカ企業で生き残るための秘訣を紹介してくれます。全2回に渡って配信予定で、今号では、まず就職活動の第一関門となる、レジュメの書き方に関してです。レジュメはよく履歴書と訳されますが、日本の履歴書のように写真も貼らなければ、フォーマットも決まっていません。しかし、書くべきポイントは決まっていて、自分を売り込みつつ簡潔にまとめる必要があります。どうぞ、お楽しみ下さい!

ネットワーキング


アメリカ経済は、サブプライムの問題に端を発し、世界経済を大混乱に陥し入れました。銀行を救済するため、多額の公的資金が注入されたり、さらにはジェネラルモーターズ(GM)、フォード、クライスラーという、アメリカ三大自動車会社が倒産の危機に瀕し、政府に救済を求めたことなどは、記憶に新しいかと思います。

統計によると、2008年1月から2009年2月までに、アメリカで360万人もの方が職を失いました。しかもその半数の人々は、ここ 3ヶ月ほどで失業しました。今後も失業率は上昇することが予想されています。これまで私自身は、大学は安全だろうと思っていたのですが、カリフォルニア、アリゾナなど多くの州で、州立大学に対する大きな予算カットが発表され、大学にも不況の波が押し寄せているようです。

このような厳しい状況の中で、多くの方が将来に関して不安を感じていることと思います。また学生・院生の方ならば、就職について心配しているでしょうし、仕事をされている方でも、自分の仕事の将来について、不安を抱いているかもしれません。

しかし、まずお伝えしたいのは、このような不況の中でも、人を探している会社はある、と言うことです。事実、私も最近、うちの会社に来ないか、とお誘いを受け、実際に面接に行きオファーを頂きました。

仕事を見つけるための鍵は、ネットワークです。


特にこのような不況下では、ネットワークは益々重要性を増すものと思われます。ネットワークとは、日本でいう「コネ」に近いものがありますが、日本でのようなマイナスイメージは全くなく、むしろ必要かつ優秀な人材をハズレなしに雇う手段として、非常に好まれています。アメリカでは知っている人を雇う、知っている人の紹介を最優先する傾向があるからです。

下記の About.com 記事によると、60%あるいはそれ以上の人が、ネットワークを通じて仕事を見つけており、ネットワークの優位性を示しています。




そのため、オンラインや雑誌、新聞などに掲載されている求人情報に応募するだけでは、もちろんゼロではありませんが、簡単には面接までたどり着けません。したがって、教授たちと良い関係を築く、友人のネットワークを広げる、学会などで様々な人と知り合いになるように努めることは、非常に重要となります。私も学生のときに、先に卒業したクラスメートを通じて仕事を見つけたケースを多く見ました。私が卒業するときも、今ほどではありませんが、就職難だったので、羨ましく思ったものです。大学の同窓会などを通じて、既に卒業して業界で活躍している卒業生に、ネットワークを広げることもできます。

私も今の仕事は、学会でお会いした方を通じて見つけました。最近面接に行った仕事も、元同じ研究室の友人を通じてのお話でした。LinkedIn.com や Facebook.com などのソーシャル・ネットワーキング・サービスを利用するのも一つの手です。もしまだネットワーク作りを積極的に行っていなければ、是非、今すぐはじめることをお勧めします。

レジュメの書き方(基礎)


ネットワーク作りの次にお勧めすることは、今すぐレジュメを書くことです。仕事を探しているときに、学会などでお会いした方にレジュメを送ってくれ、と言われたことが何度もありました。

日本でもレジュメという言葉が一般的になってきました。しかし、アメリカのレジュメは、日本でいう履歴書とは少々異なります。専用の用紙があるわけではなく、どのように書くかは本人次第です。そうは言っても、レジュメの書き方にはスタイルがあり、きちんとしたスタイルにしたがって書かなければ、それだけで悪い印象を与えてしまうことすらあります。

そこで、アメリカ企業に応募する際のレジュメの書き方について、実体験から学んだことを少し紹介したいと思います。なお、私自身もレジュメの専門家ではないので、あくまで一経験者のアドバイスとしてお受け取りください。

(ちなみに、大学教授・ポスドク職へ応募する場合に書く履歴書は、Resume ではなく、Curriculum Vitae (CV) が一般的ですが、ページ数が多く、書き方のスタイルも違うので、このエッセーでは述べません。)

英文レジュメには、以下の項目を1ページにまとめて書くのが一般的です。近年は、このルールを必ずしも守る必要はないと言われていますが、新卒ならば可能な限り1ページにし、職務経験が豊富でどうしても1ページでまとめられない場合は、2ページとするのが良いと思います。先日、卒業直前の友人からレジュメが送られてきたのですが、何と3ページもありました。明らかに書きすぎでしょう。

必須事項

  • 自分の名前、連絡先(住所、電話番号、Email アドレスなど)
  • レジュメの目的(Objective)オプションだがつけたほうが良い
  • Summary of Qualifications をオプションで付け加えても良い
  • 自分の職歴と業績(Professional Experience): 新しい仕事から年代順に
  • 技術・知識 (Skills)
  • 学歴(Education)
オプショナル
  • 資格(免許証の所持は書かない)
  • 賞与(Awards & Honors)
  • 発表論文・著書(Publications)


日本の履歴書とも重なる部分はありますが、アメリカの場合は、上記の順番は決まっておらず、各自のスタイルによって、あるいは新卒の場合と経験者の場合によって、書き方を変えたほうがよい場合があります。例えば、新卒の場合は、職歴よりも先に学歴を書いた方が良いし、応募しようとしている仕事に直結した職歴がある場合は、職歴を先に書いた方が良いと言われます。

それでは、これまで実際に自分でレジュメを書いたり、人のレジュメを見たり、アメリカ人から聞いたりしたことから、レジュメを書く際のキーポイントをいくつか挙げてみたいと思います。

まず、レジュメは、あなたが応募先の会社に与える第一印象と言えます。そして、第一印象は後々まで響くものです。きちんと整理されたレジュメを書くことは、良い第一印象を与えるための第一歩です。

レジュメの目的は、あなたを売り込むことであり、ただ単に過去のあなたの履歴を列挙するものではありません。応募先の会社があなたを雇った場合、どのようなメリットがあるかを推測させるようなレジュメを目指す必要があります。ただし、売り込むことは大切ですが、嘘を書いてはいけません。生き残りのためには手段を選ばない人もいますが、情報が事実でないと発覚すると、あとで大変なことになります。

レジュメを書くときには、応募するポジションの募集要件に即して書きましょう。つまり、応募するポジションに応じて、いくつか異なるレジュメを書く必要があるということです。企業は会社のニーズに合った人材を探しているからです。

また、素晴らしいレジュメは、あなたの能力・技術、業績について、明確・正直・力強く述べると同時に、あなたの能力・成功を裏付ける証拠について言及します。

レジュメの書き方(具体例)


それでは目的、Summary of Qualifications、職歴の項を例を挙げながら考えてみたいと思います。

目的(Objective)

【例】

  • Materials engineer/scientist position in the ......... industry

この例を使って、いくつかのルールを紹介してみたいと思います。まず、
OBJECTIVE をはじめ、前述の各項目、職歴、記述、教育などは、すべて大文字で書き、さらに太字にします。下線は必要ではないかもしれませんが、太字かつ下線を引くととても見やすくなるのでおすすめだと、アメリカ人からアドバイスをもらったことがあります。

Summary of Qualifications

次に Summary of Qualifications はオプションですが、このセクションを上手く使うと、レジュメをしっかり最後まで読んでもらえる可能性が高くなります。会社は求人広告を出すと、たくさんのレジュメを受け取りますので、スクリーニング(ざっと目を通して選別する作業)で除外されてしまって、実際に人材を募集している部署の責任者に読んでもらえないレジュメもたくさんあります。レジュメをきちんと読んでもらうためには、自分がこれまでに成し遂げた業績と、自分の持つスキルセットに焦点を当てます。レジュメの後の項で書くことの繰り返しにならないように注意する必要があります。

【例1】

  • 5 year experience on designing conductive polymer devices, holding two US patents.
  • Proven ability to design and implement highly effective experiments.
  • Outstanding multi-tasking skills.
  • Japanese/English bilingual.

上の例では箇条書き形式で書きましたが、段落形式という書き方もあります。

【例2】
5 year experience on designing conductive polymer devices, holding two US patents, Japanese/English bilingual, proven ability to design and implement highly effective experiments, and outstanding multi-tasking skills.
個人的には、レジュメは例1のような箇条書き形式で書くのがベストだと思います。理由は、なんと言っても見やすいことです。Summary of Qualifications に限らず、レジュメでは、段落形式でだらだらと書くより、箇条書き形式で書くことをお勧めします。

職歴(Professional Experience)

職歴(Professional Experience)は、レジュメの中でも最も重要な項目です。ここでは、ただ単にどういう仕事をしたかを書くのではなく、どんなプロジェクトに携わってどのような業績を挙げたのか(Accomplish-oriented)をアピールする必要があります。また、仕事を通じてどのような技術を身につけたかを述べることも重要でしょう。下の例では、最初の項である問題を解決したことを挙げ、2つ目の項で、仕事を通じてどのような技術・知識を身につけたかを書いてみました。素晴らしい例ではないかもしれませんが、職歴の項目を書く場合には、ただ単に自分の仕事(Responsibilities)だけを列挙するのではなく、Accomplishments, つまり何を成し遂げたかを書くように努めると、良いレジュメになります。

【例】
Applications Specialist, KAGAKUSHA, INC.
San Jose, CA, Sep. 2002-present
  • Completed more than 30 challenging instrument acceptance tests, leading to successful completion of installation of instruments.
  • Have carried out microscopy/spectroscopy on various materialssystems such as Si-based devices, semiconductor hetero-structures, magnetic multi-layers, nano-structured materials, developing strong materials characterization skills and solid understanding of electron optics.
  • ...

また、アメリカ人の知人に何度かレジュメを見てもらって学んだことは、箇条書きで書く際に、各項目に主語である “I” を書かないことです。例えば上の例で言えば、最初の項目の文章をキチンと書くならば、I completed... と始めるのが正しいのですが、“I” は書かずに Completed... と始めます。また現在進行中のことであれば、I am consulting with... とは書き始めずに Consulting with... と始めるようです。

Relevant Experience & Employment

RA/TA 以外の職務経験がない場合は、Professional Experience の代わりに Relevant Experience & Employment という項目を作れば良いと思います。
この場合も同様に、どのような仕事をしてどのような技術を身につけたのか、あるいはどういう成果を出したのかをまとめます。

【例】
Graduate Research Associate, Prof. XYZ Group,
ABC University, ABC, CA, 2001-2003
  • Carried out research on wide-bandgap GaN semiconductor, and developed skills on thin film growth, and device fabrications.

レジュメに関してはこれくらいにしたいと思います。インターネット上にたくさんのサンプルがありますので、是非調べてみてください。私も参考までに書いてみました。実際に書いてみると中々難しいものですね。コメント・批評などあれば、よろしくお願いします。


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編集後記
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先日、ニューヨーク州ロングアイランドに出張で行った際に、接待でお客さんを夕食にお連れしました。お客さんのリクエストでロブスターをご馳走してくれると言う高級レストランに行ったのですが、大きなレストランのダイニングエリアは空っぽ。火曜日の晩と言うこともあったかもしれませんが、お客は私達4人だけでした。そのレストランにいた2時間ほどの間に、レストランにやってきたのは、私達以外に2人だけでした。不景気の影響で少し高めのレストランの売り上げはかなり落ちていると聞いていましたが、それを目の当たりにした瞬間でした。まあ私達は美味しいロブスターをレストランほぼ貸し切り状態で楽しんだわけですが。オバマ新大統領の下、この不景気を脱出しようと大型の経済活性化案が出ております。この政策で国の赤字、借金が増えるため反対派勢力も多いですが、何とか経済が活性化され経済が上向くことをただただ祈るばかりです。(著者・青木

先日実施したアンケートでもご意見を頂きましたが、この経済不況が、どのようにアメリカ経済・サイエンス界に影響をもたらすのか、多くの方の関心を集めています。それに関連して、杉井さんが「時事ニュース:アメリカ景気対策法案が成立、サイエンス関連は?」と題してまとめてくれました。カガクシャネットのウェブサイトより、ぜひご覧下さい。(編集・山本



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執筆者紹介
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青木敏洋 (Toshihiro Aoki)
カガクシャ・ネットでのタイトル: カガクシャ・ネットアドバイザー

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