2016年10月24日月曜日

学位留学FAQ

今月のメルマガでは、学位留学についてよく寄せられる質問を Q&A 形式で紹介します。LinkedIn での過去のディスカッションをまとめていますので、複数の回答があった質問では、すべての回答を紹介しています。学位留学の出願に向けて、どうぞご参考に!

質問1
理工系の海外の大学院では学費が無料で、なおかつ生活費(給料)が出るというのは本当ですか?
 回答
絶対ではありませんが、博士課程では出る場合が多いです。また、大学院自体は合格であっても、全額自費という場合も当然あります。

質問2
海外の大学院の博士課程プログラムでは奨学金・給与は具体的にどの程度頂けますか?また、その奨学金・給与で、十分な生活ができますか?
 回答
金額は場所によってまちまちですが、一人暮らしをする分には十分なくらい貰えます。ただ、すでにご結婚されている場合、夫婦二人分の生活費をResearch Assistant (RA) だけで賄うのは少し厳しいです(不可能ではないです)。

質問3
日本で奨学金を取った方が有利ですか?またどこの奨学金に応募すればいいですか?
 回答1
投資という面で考えれば、奨学金の申請には、長くても数日で完成する書類を提出し、面接を受けるだけで、数百万円から数千万円のリターンを得られる機会で す。仮に奨学金が不採用になっても、数時間の書類作成期間と書類郵送費以外には何の影響もありません。よってノーリスク・ハイリターンの絶好の機会である と考えられるので、該当するものはすべて応募するくらいの感覚でも良いと思います。
 回答2
既に回答は出ておりますが、上記に加え、奨学金を外部からもらうことができれば、大学院側の資金面での負担が減る分、受け入れの可能性が上がるかと思います。また、「奨学金を貰える=優秀」というアピールも可能ではないでしょうか。
 回答3
奨学金の応募に関しましては、JASSO の海外留学奨学金パンフレットが良くまとまっており、大変便利です。http://ryugaku.jasso.go.jp/publication/pamphlet/

質問4
海外の大学院の博士課程プログラムに応募する際には何が必要ですか?
 回答
多くの場合出願に必要なものは、成績証明書、TOEFL (または IELTS)、GRE の受験 (米国の場合)、CV (または Resume)、推薦状 (2〜3通)、Statement of Purpose (出願理由を書いたエッセイでとても重要)ですが、大学や学科によっても応募書類が異なる場合があるので、事前の調査が大切です。プログラムによっては、 Skype での面接を要求される場合があります。

質問5
海外の大学院の博士課程プログラムには入学希望時期からどのくらい前までに応募しますか?
 回答
米国の場合は大学院の多くは9月入学で、入学願書の締め切りは前年12月から1月です。欧州では随時願書を受け付けている場合もあります。

質問6
留学準備にはどの程度の時間がかかりましたか?
 回答
留学相談会などで、どれくらいの準備期間を取ったかをスタッフに聞くと、決断してから出願まで2年くらいという答えが返ってくることが多いです。米国出願の 場合は、最近ブログにも出ていましたが、夏までに TOEFL (IELTS)、GRE を終わらせておくことが理想です(が、現実的には秋の終わりにまでズルズルかかることも多々...
http://kagakushanet.blogspot.com/2016/03/blog-post_14.html
準備が間に合わなかった場合やオファーがもらえなかった場合に備えて日本の大学院に併願しておくことも悪いことではないですし、日本で D2 まで研究してから米国の大学院に移ったという例も聞いたことがあります。フレキシブルに計画を立てることをお勧めします。

質問7
英語のスコアをどうやって上げたらいいですか?
 回答1
何事にも練習なので、使う頻度を増やすというのはいかがでしょうか。
 回答2
英語力は一朝一夕に身につくものではありません。毎日の地道な練習が大切です。また、スコアを伸ばすためには大量の練習問題を解いて、問題形式に慣れるということも必要となってきます。

質問8
GPA が低いのですが...
 回答1
プログラムによっては、GPA 3.0 で足切りをしてしまう可能性があります。以前私(中尾)の指導教官が GPA 以外は良さそうな applicant が居るけど、GPA 3.0 cut は結構厳密で取るのは難しい、とぼやいていました。Minimum score を公表している所は多いと思います。
 例 (UC Riverside): What are the minimum scores accepted?
 http://www.cee.ucr.edu/graduate/gradfaq.html
他の要素が優れていればカバー出来る、というケースもあると思うので、いくつかの department に問い合わせてみて、minimum GPA より低くても考慮してもらえるのか確認してみたら良いのではないかと思います。
 回答2
米国の博士課程からオファーが出なかった場合に備えて、修士のみのコースにも出願しておくことは悪いことではないと思います。日本の大学院の博士課程と比較した場合、
  1. 英語で研究できる
  2. 米国で授業を取ることで、その単位が(PhDは別の大学に行ったとしても)米国の博士課程に移行できる場合がある
  3. RAなどの資金援助を得るのは MS program だと厳しそうで、授業料などの出費は痛い
  4. 働きぶりによっては強い推薦状を(行きたいラボと近しい先生に)書いてもらえるということが挙げられます。
質問9
推薦状は誰に頼むのが良いですか?
 回答
内容がいいものが書いてあるという前提の上では、強いのはおおよそ以下の順であると考えられます。希望の教官本人 > 希望先の学科の選考委員会の教員 >> 世界的に、特に同分野では著名な人物 > 教官本人との直接の知り合い > 指導教官 > 学科の先生など。もちろん、推薦状を書いてもらう先生に自分を知ってもらう努力が大切です。

質問10
特定の大学や先生へのコネクション等は特にないので、興味のある各教室の先生方にメールを送るべく計画を立てています。しかし先生方もお忙しいと思いますし、博士課程からのツテなし留学は、厳しいでしょうか?
 回答1
コネに関しては、以前ブログにも書きましたが、なければ作れば良いのではないでしょうか。http://kagakushanet.blogspot.com/2015/08/blog-post_29.html
 回答2
ツテについてですが、ツテがなくても、メールがきちんとしていて、面白そうな学生だと思ってもらうことさえできれば、返信がくるのではないかと思います。私 は出願の時に、返信が来ないことを恐れてなかなかメールできませんでした。今考えるともったいないことをしたと思います。波長の合う先生ならきっと返信が あるはず (と私は信じています)。波長が合う・合わない先生を見極めるいい手段と思って、まずはメールをしてみたらいかがでしょうか?
 回答3
返事がきやすいメールの書き方をまとめました。是非ご参考下さい。http://www.hajime77.com/entry/PhD/application/contacts

質問11
一流校のPhDコースへの出願において、研究実績は実質的に必須なのでしょうか。
 回答1
書類で重要なのはポテンシャルを感じさせられるかどうかだと思います。
学部生で論文を出す方はあまりいないですし、co-author の論文があっても
どうせ大学院生が書いたものでしょ、という印象です。学部生の場合、GPA、
テストスコアが満足に取れていれば、あとは小さくても学会発表をするとか、
奨学金や賞をとるとかで差がつくかと思います。やはり知っている人からの
推薦状があると一番取りたくなります。修士を持っている学生には
その分期待値も上がります。微妙な成果しかあげていない修士卒は、
優秀そうな学部生と大差ない場合もあります。学部生で Publication が
なくても可能性はありますし、修士で Publication が出せたからといって
必ずしも学部生よりも強い Candidate になるとも限らないです。
最終的には運も大きく影響するので、最低数校は応募しておいて
損はないと思います。(中尾)
 回答2
必須ではありませんが、あると選考にはプラスに働くでしょう。実績と
いっても、publish されているかどうかにかかわらず、研究室で何の実験を
してどういうスキルを得たか、何の知識があるかがアピールできれば
十分強みと言っていいかと思います。

質問12
学校、研究室はどのように探しましたか?
 回答1
一般的な情報ですが、US News の大学ランキングが参考になるかもしれません。http://grad-schools.usnews.rankingsandreviews.com/best-graduate-schools (高橋)
 回答2
私は論文・研究室HPを読みあさりましたが、今思うとあまり効率は良くなかったと思います。日本で、米国での研究事情に詳しい先生を捕まえて相談して、紹介してもらった方が素早く情報が集まると思います。(中尾)

質問13
学校、研究室を選ぶ基準はどのようなものでしたか?
 回答1
研究内容・場所・先生の数の多い学科のほうが研究内容が多様で、学べる幅も広くなります。また、興味のある研究をやっている先生が複数いた方が、コンタクトしやすいですし、入学後の研究室変更ということもできます。
 回答2
私の場合は実際に時間を作って複数の研究室を訪問しました。教授の人柄や研究室の雰囲気というのは百聞は一見に知らずです。もしその研究室が気に入れば、モチベーションアップにもなると思います。

質問14
分野変更についてですが、「そもそも入学できるのか」という疑問と「仮に受かってもコースワークについて行けないのではないか」という疑問があります。
 回答1
やる気次第ではないでしょうか?
 回答2
質問11と同様で、入学できるのかについてはポテンシャルを感じるかどうかによると思います。他分野の人材を受け入れることによって新たな研究の方向性が見えてくることを期待している場合もあります。実際に他分野出身の学生をとっている例はいくらでもあります。
 回答3
分野を変えるということ自体はプラスともマイナスとも取れます。これまで学んできたことを活かせる要素があれば、それは大きなアピールポイントになります。

質問15
海外の大学院に進学した場合、日本や滞在先での年金、保険はどうなるのでしょうか?
 回答
日本での保険・年金は、支払っていれば加入し続けることができます。海外の場合、入学と同時に保険への加入が求められます。大学院留学の場合保険料は大学持ちであることが多いですが、(アメリカの場合)歯医者が保険適用外であることが多いです。

質問16
博士課程修了でも現地の一般企業への就職は可能でしょうか。
 回答
十分可能です。Visa の問題だけでなく、就職を見越した在学中の準備が大切です。

質問17
Resume の書き方について教えてください
 回答
こちらの記事にまとめましたので、ぜひご覧ください!
http://kagakushanet.blogspot.com/2013/12/blog-post.html

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○ 次回からは3か月に渡ってアメリカ修士卒の就職活動記をお送りします。お楽しみに!

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(上記サイトでバックナンバー閲覧可)
発行責任者: 武田 祐史
編集責任者: 日置 壮一郎
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