2018年7月24日火曜日

スタッフの研究紹介(V)「合成生物学:スーパー(?)バクテリア」

スタッフの研究紹介、第5回の今回は座談会担当の張本さんに伺いました!

コロンビア大学のキャンパスから見たマンハッタン

Q1. まず始めに、研究分野の大まかな概要を高校生や大学生でも理解できるように、できるたけ専門用語を使わずに、簡潔に教えて下さい。(例えば、高校生の教科や、大学生の1、2年生で習う基礎科目との研究分野との関連性を説明していただくと非常に分かりやすいと思います。)

合成生物学とは新しい生命機能をデザインして作り上げることを通して、生命の仕組みを理解したり、医学・産業に有用な新規生物を作り上げることを目的とした学問です。よく使われる例えとしてはコンピュータコードを書くことでソフトウェアをプログラミングするように、DNAを組み合わせることで生物をプログラミングできるというものです。合成生物学はまだ歴史が20年弱の学問ですが、最近では人工的細胞をゼロから作り上げたり、自然界には存在しない生命機能を組み入れることに成功したりと発展がめまぐるしい分野です。将来的には病気を自動的に発見して直してくれる体内細胞、試験管の中で育つ食用肉や燃料、家の形になる植物など多岐にわたる用途が期待されています。

Q2. 具体的な研究テーマと研究目的について説明して下さい。

研究テーマは、ガンを見つけ出し戦ってくれるスーパー(?)バクテリアを作ることです。バクテリアはガン患者の体内に侵入した際、ガン組織内のみにて特異的に増殖する特殊な能力を持っています。さらに合成生物学の技術を使うことで、遺伝子回路と呼ばれる生命機能をバクテリアに持たせることができるようになりました。これにより、例えばガンと思われるAとBの物質を見つけた時のみ、それに効くと思われる抗がん剤Cを選んで放出してくれるような生物をプログラミングできるようになってきています。

Q3. 日本と留学先での研究環境の違いについて具体的に教えてください。

私はカナダの大学に行ったため日本での研究経験は浅いですが、北米の研究室は多様なバックグラウンドを持った方々がいる印象を受けました。例えば私の研究室では、多国籍なだけでなく、軍隊、芸術、製薬、金融などを介して今は研究者になっている方々がいます。

Q4. ご自身が研究者を目指された「きっかけ」や、研究の「面白さ」について説明してください。

研究を目指した背景としては、何か誰も知らないことを明らかにしたり、作って見たりしたいと思う気持ちが大きいからだと思っています。研究の面白さは、自分で考えた仮説を実験計画を立てるところから、最後の結果までやりとげる達成感でしょうか。毎日予想外の結果が出ることは辛い時もありますが、とても楽しいです。

Q5. 一日のスケジュールを円グラフで教えて下さい。


Q6. これから留学を目指す学生にひとことアドバイスをお願いします。

留学は研究だけでなく現地の文化や人々に触れ合って、とても楽しいことがたくさんあります。住めば都となる場所もたくさんあると思うので、肩の力を入れすぎずに楽しんで挑戦してみるのも一つの方法だと思います!


著者略歴

 張本哲弘(はりもと てつひろ)

 2014年5月 トロント大学(カナダ)薬理学科 毒理学コース 卒業
 2021年5月 コロンビア大学生命工学専攻 博士課程修了(見込み)

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2018年7月14日土曜日

スタッフの研究紹介(IV)「タンパク質を自由自在に創るタンパク質工学」

第4回の今回は、カガクシャ・ネット編集部の楊さんの研究と留学生活をご紹介します。楊さんは2016年春に大阪大学理学部化学科を卒業され、同年8月からカリフォルニア大学デービス校にて化学を専攻されています。


○ 研究分野の概要を教えて下さい。

タンパク質は触媒として生体内での様々な反応を担っています。タンパク質工学では理論計算または進化分子工学実験を用いて役に立つタンパク質をデザイン、作製し、産業や医療に応用することを目指しています。進化分子工学実験では大量の変異体をランダムに構築し、その中から欲しい機能を持った変異体をスクリーニングします。



タンパク質の理論計算はいろいろな方法が開発されています。


○ 具体的な研究テーマと研究目的について説明して下さい。

有機化合物の合成に使う酵素をタンパク質工学で製作する研究をしています。タンパク質の高い基質特異性を利用し、効率よく有機化合物の合成ができます。タンパク質工学で酵素を合成に利用できるように変えていきます。


○ 日本と留学先での研究環境の違いについて具体的に教えてください。

学科内での共同研究や実験機器、実験機材の貸し借りが頻繁に行われ、効率よく研究 を進められます。また、日本と比べて、「hands off」な先生が多く、大学院の1年目 から自立性や積極性をより求められます。


○ ご自身が研究者を目指された「きっかけ」や、研究の「面白さ」について説明してください。

科学に対する好奇心があり、まだ誰も知らない事を明らかにしたい思っていました。あまり深く考えずに大学院に進みました。研究の「面白さ」については今のところタンパク質工学で何ができるのかを考え、研究の計画を作ることです。


○ 一日のスケジュールを円グラフで教えて下さい。




○ これから留学を目指す方にひとことアドバイスをお願いします。

海外に住み、文化や生活を体験できるチャンスはあまりないので、留学に興味がありましたら、ぜひ試してください。

○ 楊さんにご質問がありましたら、カガクシャ・ネット宛にお気軽にご連絡ください。
○ 次回の更新は今月の下旬を予定しております。お楽しみに!


著者略歴

    楊 瀟瀟 (ヤン シャオシャオ)

    2016年4月 大阪大学理学部化学科 卒業 
    2016年9月 カリフォルニア大学デービス校化学専攻博士課程 入学

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